- 9月 27, 2026
- 10月 1, 2026
🌿 第7回 漢方シリーズ
便秘に使われる漢方薬
~タイプ別の選び方と注意すべきポイント~
「便が硬くて出にくい」
「何日も便が出ない」
「お腹が張って苦しい」
「便秘薬を飲んでいるのに、すっきりしない」
便秘は、外来でもよく相談される症状の一つです。
一口に「便秘」といっても、その状態は一人ひとり違います。
便が硬いのか、乾燥しているのか、お腹の張りや腹痛を伴うのか、年齢や体力はどうか。
漢方では、こうした便の状態や症状、体質、「証」などをみながら処方を考えます。
今回は、便秘に使われる代表的な漢方薬と、使用するときに知っておきたいポイントをご紹介します。
同じ便秘でも、選ぶ漢方薬は違います
便秘は、単に「何日便が出ていないか」だけで判断するものではありません。
- 便が硬い
- 乾燥している
- お腹が張る
- 腹痛を伴う
- 排便してもすっきりしない
- 冷えがある
- 体力が低下している
など、症状はさまざまです。
そのため漢方でも、
「便秘だから、この漢方薬」
と一つに決めるわけではありません。
便の状態や腹部症状、体質などを確認し、第2回でご紹介した「証」もみながら処方を考えます。
便秘に使われる代表的な漢方薬
便秘に使われる漢方薬はいくつもあります。
まずは代表的な3つ、
①大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
②麻子仁丸(ましにんがん)
③潤腸湯(じゅんちょうとう)
をみてみましょう。
図1.便秘に使われる代表的な3つの漢方薬

① 大黄甘草湯 ― 比較的シンプルな便秘に
大黄甘草湯は、その名前のとおり、
大黄(だいおう)
甘草(かんぞう)
という2種類の生薬から構成されています。
大黄には、大腸の動きを促して排便を助ける作用があります。
そのため、便が出にくい、数日間便が出ていないといった場合に使われることがあります。
ただし、
「便秘なら、とりあえず大黄甘草湯」
というわけではありません。
便秘の原因や腹部症状、体質、ほかに服用している薬などを確認して処方します。
② 麻子仁丸 ― 硬い便、高齢者などに
麻子仁丸は、特に便が硬く、出にくいタイプの便秘に使われることがあります。
たとえば、
「便がコロコロして硬い」
「便意はあるけれど、なかなか出ない」
といった訴えが、処方を考える手がかりになります。
高齢になると、食事量や水分摂取量、活動量の低下などが重なり、便が硬くなることもあります。
ただし、
「高齢者だから麻子仁丸」
と機械的に決めるわけではありません。
便の状態、体力、基礎疾患、併用薬なども確認します。
③ 潤腸湯 ― 乾燥した硬い便に
潤腸湯の「潤腸」には、文字どおり「腸を潤す」という意味があります。
特に、
- 便が乾燥している
- 硬い便が出にくい
- 高齢者
- 体力が低下している
といった場合に使われることがあります。
同じ「硬い便」でも、患者さんの状態によって麻子仁丸や潤腸湯などを使い分けます。
このように、便秘の漢方薬は単純に「強い・弱い」で選ぶものではありません。
便秘に使われる漢方薬は、この3つだけではありません
便秘の状態や一緒に現れる症状によって、ほかの漢方薬を選ぶこともあります。
④桂枝加芍薬大黄湯
腹痛や腹部膨満感を伴う便秘などに使われることがあります。
「お腹が張る・痛い+便秘」が、処方を考える手がかりになります。
⑤桃核承気湯
便秘に加えて、月経に関連する症状やのぼせなどを伴う場合に使われることがあります。
便秘だけではなく、複数の症状や「証」をみながら選ぶ処方です。
⑥防風通聖散
体力が比較的充実し、腹部に皮下脂肪が多く、便秘傾向がある方などに使われます。
一般には肥満に関連する漢方薬として知られていますが、便秘に対する作用もあります。
⑦大建中湯
大建中湯は、ここまでの処方とは少し性格が異なります。
冷えや腹部膨満感などがある場合に使われることがあり、大黄を含んでいません。
つまり、便秘に使われる漢方薬がすべて同じ仕組みで便を出すわけではありません。
便秘の漢方薬で知っておきたい「大黄」
今回ご紹介した漢方薬の多くには、大黄(だいおう)が含まれています。
大黄は、センノシド類などを含み、排便を促す作用をもつ生薬です。
ここでよく知られている「センナ」との関係を整理しておきましょう。
大黄とセンナは同じ植物ではありません。
一方で、排便を促す作用には共通する部分があります。
そのため、
「漢方薬だから刺激性下剤とはまったく別物」
と考えるのも正確ではありません。
また、処方名が違っていても、複数の漢方薬に大黄が含まれていることがあります。
たとえば「便秘の漢方薬」と「肥満対策で使用している漢方薬」を別々の薬だと思っていても、両方に大黄が含まれていることがあります。
市販の便秘薬を併用している場合も同様です。
知らないうちに作用が重なると、腹痛や下痢などにつながることがあります。
そのため、現在使用している処方薬・漢方薬・市販薬は、医師や薬剤師にまとめて伝えることが大切です。
便秘で大切なのは「何を飲むか」だけではありません
便秘治療では、
なぜ便が出にくくなっているのか
を考えることが大切です。
便が硬い場合と、腹痛や腹部膨満感が強い場合では、治療方法が異なります。
また、便は軟らかいのに出しにくい場合には、排便時のいきみ方や骨盤底機能など、便の硬さ以外の原因が関係していることもあります。
つまり、同じ「便秘」でも、原因や状態によって治療は変わります。
漢方薬も、その治療選択肢の一つです。
便秘では、まず原因を確認することが大切です
便秘は非常にありふれた症状ですが、背景に別の病気が隠れていることもあります。
特に、
- 急に便秘がひどくなった
- 血便がある
- 体重減少が続いている
- 強い腹痛や嘔吐がある
- お腹が強く張っている
- 便が急に細くなった
- 貧血を指摘された、または貧血が続いている
などの場合には、便秘薬だけで様子をみず、原因を確認する必要があります。
また、服用している薬が便秘の原因になっていることもあります。
まず必要な病気を見逃さないこと。
そのうえで、症状や体質に応じて漢方薬を取り入れることが大切です。
🌿 院長からのワンポイント
便秘の患者さんを診察するとき、
「何日出ていませんか?」
だけでは判断しません。
私は、
便は硬いのか
お腹は張るか
腹痛はあるか
便意はあるか
排便時に強くいきむか
現在どんな便秘薬を使っているか
などを確認します。
便秘治療で大切なのは、
「一番強い下剤を選ぶこと」ではなく、その方の便秘の原因と状態に合った治療を選ぶこと。
便の状態や腹部症状、現在使用している薬などを確認しながら治療を考えます。
西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方医学の考え方を組み合わせます。
まとめ
便秘に使われる代表的な漢方薬には、
大黄甘草湯・麻子仁丸・潤腸湯
などがあります。
さらに症状や体質によって、
桂枝加芍薬大黄湯・桃核承気湯・防風通聖散・大建中湯
などが選択肢になることもあります。
同じ便秘でも、便の硬さ、腹部症状、年齢や体力、「証」などによって選ぶ漢方薬は異なります。
また、大黄を含む漢方薬では、ほかの漢方薬や市販薬との重複にも注意が必要です。
そして、便秘の背景に治療が必要な病気がないか確認することも大切です。
次回予告
🌿 第8回 漢方シリーズ
疲れ・体力低下に使う漢方薬
~補中益気湯・人参養栄湯・六君子湯をどう使い分ける?~
「最近、疲れやすい」
「食欲が落ちた」
「病気のあと、なかなか体力が戻らない」
同じ「疲れ」でも、症状や体力、食欲などによって選ぶ漢方薬は異なります。
次回は、補中益気湯・人参養栄湯・六君子湯などを取り上げながら、「疲れ・体力低下」を漢方ではどのように考えるのかをご紹介します。
漢方薬について、このようなお悩みはありませんか?
- 西洋薬だけでは症状がなかなか改善しない
- 冷えや便秘、食欲低下などが続いている
- 更年期症状で困っている
- 漢方薬が自分に合うのか相談してみたい
漢方薬は、
患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて処方する「医療用医薬品」です。順聖クリニックでは、西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方薬も組み合わせ、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
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文責:総合内科専門医 内藤 修
