- 9月 13, 2026
🌿 第4回 漢方シリーズ
更年期に使う漢方薬
~同じ更年期でも、選ぶ漢方薬が違う理由~
「急に顔がほてって汗が出る」
「最近、イライラすることが増えた」
「よく眠れない」
「手足が冷えて、むくみも気になる」
更年期には、さまざまな心身の不調が現れることがあります。
そして、症状の現れ方は一人ひとり違います。
同じ「更年期障害」でも、ほてりが強い方、イライラや不安が目立つ方、冷えやむくみに悩む方など、その症状はさまざまです。
漢方では、このような違いを大切にします。
第2回でご紹介した「証(しょう)」、第3回でご紹介した「気・血・水」などを手がかりに、その方の症状や体質に合った漢方薬を考えます。
今回は、更年期障害によく使われる代表的な漢方薬をご紹介します。
更年期障害では、症状が一人ひとり違います
女性の更年期とは、一般に閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた約10年間を指します。
この時期には女性ホルモンの変化に伴って、
- ほてり・のぼせ・発汗
- 動悸・めまい・頭痛
- 肩こり・冷え
- 疲れやすさ
- 不眠
- イライラ・不安
- 気分の落ち込み
など、さまざまな症状が現れることがあります。
そのため、「更年期だから全員同じ治療」ではありません。
症状の種類や程度、体質などを確認しながら治療を考えていきます。
更年期障害と漢方薬
更年期障害には、生活習慣の見直し、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬など、さまざまな治療があります。
漢方薬もその選択肢の一つです。
特に代表的なのが、
加味逍遙散(かみしょうようさん)
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
の3つです。
しかし、
「更年期なら、この3つから適当に選べばよい」
というわけではありません。
同じ更年期障害でも、症状や体質、「証」によって選ぶ漢方薬が変わります。
図1.更年期によく使われる3つの漢方薬

① 加味逍遙散
加味逍遙散は、
- イライラや不安
- 疲れやすさ
- 不眠
- のぼせ
など、身体の不調と精神的な症状が重なっている方に使われることがあります。
更年期には、
「検査では大きな異常はないけれど、いろいろなところが調子悪い」
という方も少なくありません。
そのような複数の症状をみながら処方を考えることがあります。
② 桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸は、
- のぼせ
- 肩こり
- 頭痛
- めまい
- 冷えのぼせ
などがみられる場合に使われることがあります。
漢方では、血の巡りが滞った状態を「瘀血(おけつ)」と呼びます。
「顔はほてるのに足は冷える」
といった症状も、処方を考える手がかりになります。
第3回でご紹介した「血」の考え方が、ここで実際の治療につながってきます。
③ 当帰芍薬散
当帰芍薬散は、
- 手足の冷え
- むくみ
- めまい
- 疲れやすさ
などがみられる方に使われることがあります。
ここでは、第3回でご紹介した「血」と「水」の状態が処方を考える手がかりになります。
同じ更年期障害でも、イライラやのぼせが強い方と、冷えやむくみが目立つ方では、選ぶ漢方薬が違うことがあるのです。
「3つの中から選べばよい」わけではありません
更年期障害に使われる漢方薬は、この3種類だけではありません。
症状や「証」によって、ほかの漢方薬が選ばれることもあります。
また、
「イライラするから加味逍遙散」
「むくむから当帰芍薬散」
と、一つの症状だけで機械的に決めるものでもありません。
患者さんの症状の組み合わせ、体質、体力などを総合的にみて処方を選びます。
「更年期だから」と決めつけないことも大切です
動悸、倦怠感、発汗、めまい、不眠などは、更年期だけにみられる症状ではありません。
貧血、甲状腺疾患、心疾患、睡眠障害など、別の病気が隠れていることもあります。
そのため、必要に応じて検査を行い、ほかの病気が隠れていないか確認することも大切です。
これは第1回からお伝えしている、
「西洋医学で診断し、必要な治療を行ったうえで漢方を組み合わせる」
という考え方そのものです。
漢方薬以外の治療を組み合わせることもあります
更年期障害の治療は、漢方薬だけではありません。
症状や患者さんの希望、既往歴などに応じて、ほかの治療を選択することもあります。
当院では更年期障害に対して漢方薬を希望される患者さんも比較的多く、適応を確認したうえで、更年期障害に保険適用のあるプラセンタ製剤「メルスモン」による治療を行うこともあります。
大切なのは、
「漢方だけ」「注射だけ」と最初から治療を一つに決めないこと。
患者さんの症状や希望を確認しながら、その方に合った治療を考えていきます。
🌿 院長からのワンポイント
更年期障害では、一人の患者さんに複数の症状が重なっていることが珍しくありません。
だからこそ、
「更年期=この漢方薬」
と病名だけで決めるのではなく、その方が何に一番困っているのかを丁寧にみることが大切です。
総合内科医として、まず必要な病気を見逃さないよう診断し、そのうえで患者さんの症状や体質に合わせて漢方薬を取り入れています。
第2回の「証」、第3回の「気・血・水」は、こうした実際の漢方診療につながっています。
まとめ
更年期には、ほてり、発汗、冷え、めまい、不眠、イライラなど、さまざまな症状が現れます。
代表的な漢方薬には、
加味逍遙散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散
があります。
しかし、同じ更年期障害でも、症状や体質、「証」によって選ぶ漢方薬は異なります。
そして、更年期に似た症状を起こす別の病気が隠れていないか確認することも大切です。
西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方医学の考え方を組み合わせる。
それが、当院で大切にしている診療の考え方です。
次回予告
🌿 第5回 漢方シリーズ
頭痛・めまいに使う漢方薬
~同じ頭痛・めまいでも、選ぶ漢方薬が違う?~
「雨が降る前になると頭が痛い」
「冷えると頭痛がする」
「めまいとむくみが一緒に起こる」
同じ頭痛やめまいでも、症状の現れ方はさまざまです。
次回は、五苓散・呉茱萸湯・釣藤散などを取り上げながら、どのように漢方薬を使い分けるのかをご紹介します。
漢方薬について、このようなお悩みはありませんか?
- 西洋薬だけでは症状がなかなか改善しない
- 冷えや便秘、食欲低下などが続いている
- 更年期症状で困っている
- 漢方薬が自分に合うのか相談してみたい
漢方薬は、
患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて処方する「医療用医薬品」です。順聖クリニックでは、西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方薬も組み合わせ、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
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漢方薬シリーズを読む
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[~漢方医学の基本をやさしく解説~]
第4回 更年期に使う漢方薬
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第5回 頭痛・めまいに使う漢方薬
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第6回 胃腸の不調に使う漢方薬
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文責:総合内科専門医 内藤 修
