• 10月 23, 2026

🌿 第12回 漢方シリーズ

かぜに使う漢方薬

~葛根湯だけじゃない?症状や時期で選ぶ漢方薬~

「かぜをひいたから、葛根湯を飲んでおこう」
葛根湯は、かぜに使われる漢方薬としてよく知られています。

しかし、「かぜ=葛根湯」ではありません。

同じかぜのひきはじめでも、

「ゾクゾクと寒気がする」
「首や肩がこわばる」
「ふしぶしが痛い」
「自然に汗が出ている」
「手足まで冷える」

など、症状の現れ方は人によって違います。

漢方では、かぜという病名だけで薬を選ぶのではなく、症状や時期、その人の体力などを見ながら処方を考えます。

今回は、葛根湯をはじめとする代表的な漢方薬を、「どんなときに、どの漢方薬を選ぶのか?」という視点から見ていきましょう。

かぜのひきはじめは「寒気」と「汗」に注目

かぜのひきはじめに漢方薬を考えるとき、「寒気」と「汗」は大切な手がかりです。

寒気があっても、汗が出ていない人と、自然に汗が出ている人では、選ばれる漢方薬が違うことがあります。

さらに、首や肩のこわばり、ふしぶしの痛み、手足の冷え、体力の低下なども参考にします。

図1.かぜの症状・時期と代表的な漢方薬

かぜの症状や時期に使われる代表的な漢方薬(葛根湯・麻黄湯・麻黄附子細辛湯・桂枝湯・小青竜湯・桔梗湯・麻杏甘石湯・麦門冬湯)の特徴を比較した図
かぜの症状や時期、体質によって、選ばれる漢方薬は異なります。

① 悪寒があり、首や肩がこわばる ― 葛根湯

葛根湯(かっこんとう)は、かぜのひきはじめに使われる代表的な漢方薬です。

特に、寒気があり、まだ自然に汗が出ておらず、首すじや肩がこわばるようなときが一つの目安です。

「なんとなく寒気がする」
「首の後ろが重い」
「肩がこってきた」

といった症状が手がかりになります。

有名な漢方薬ですが、かぜなら誰にでも同じように使うわけではありません。

② 悪寒が強く、ふしぶしが痛む ― 麻黄湯

麻黄湯(まおうとう)も、かぜのひきはじめに使われます。

葛根湯と似ていますが、強い悪寒があり、汗が出ておらず、ふしぶしの痛みが目立つ場合などが目安になります。

「ゾクゾクする寒気が強い」
「熱が出てきた」
「体中が痛い」

といった症状です。

葛根湯では首や肩のこわばり、麻黄湯では強い悪寒や体の痛みが目立つ、と考えると違いをイメージしやすいでしょう。

③ 悪寒・冷え・体力低下 ― 麻黄附子細辛湯

同じ寒気でも、高齢の方や疲労がたまっているときなどには、手足の冷えや体力低下が目立つことがあります。

このような場合に選択肢となるのが、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)です。

「ゾクゾク寒い」だけでなく、「手足まで冷える」「体がだるい」「元気が出ない」といった症状が手がかりになります。

同じかぜのひきはじめでも、その人の体力まで見て処方を考えるところが、漢方の特徴の一つです。

④ 自然に汗が出て、悪寒や微熱がある ― 桂枝湯

一方、かぜのひきはじめから自然に汗が出ている場合には、葛根湯や麻黄湯とは違った考え方をします。

代表的な漢方薬が桂枝湯(けいしとう)です。

比較的体力が低下していて、悪寒や微熱があり、自然に汗が出ているような場合に使われます。

つまり、「汗が出ているか、出ていないか」という違いも、漢方薬を選ぶ大切な手がかりになります。

ここまで見ただけでも、かぜのひきはじめに使う漢方薬が葛根湯一つではないことが分かります。

かぜの漢方薬は、ずっと同じとは限りません

かぜは時間とともに症状が変わります。

最初は寒気だったのに、その後、鼻水やくしゃみが目立ったり、のどが痛くなったり、咳だけが残ったりすることがあります。

そのため、かぜの漢方薬は、最初から最後まで同じものを飲み続けるとは限りません。

水のようにサラサラした鼻水やくしゃみが目立つときには、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が使われます。鼻かぜだけでなく、アレルギー性鼻炎などでも使われる漢方薬です。

のどが腫れて痛むときには、桔梗湯(ききょうとう)が選択肢になります。

強い咳や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューする呼吸)が目立つ場合には、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)が使われることがあります。

一方、熱や鼻水は良くなったのに、乾いた咳や痰の切れにくい咳が続く場合には、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などが使われます。

同じ「かぜ」でも、症状が変われば、選ばれる漢方薬も変わることがあるのです。

「かぜ=漢方だけで大丈夫」とは限りません

かぜのように見える症状の中には、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、肺炎などが含まれていることがあります。

特に、息苦しさがある、高熱が続く、水分が十分にとれない、ぐったりしている、症状が急速に悪化しているといった場合には、漢方薬だけで様子を見ず、医療機関を受診しましょう。

なお、漢方薬にも副作用や、ほかの薬との飲み合わせがあります。市販薬を含め、服用中の薬がある場合は医師や薬剤師にお伝えください。

🌿 院長からのワンポイント

「かぜをひきました。葛根湯でいいですか?」

そんなときには、

「寒気はありますか?」
「汗は出ていますか?」
「首や肩はこわばっていますか?」
「ふしぶしは痛みますか?」
「鼻水、のど、咳では、どの症状が一番つらいですか?」

といったことを確認します。

同じ「かぜ」でも、症状は人によって違い、時間とともに変化します。

昨日は葛根湯を考えるような状態でも、今日は鼻水や咳が中心になっているかもしれません。

漢方では、「かぜ」という病名だけを見るのではなく、「今、その人にどのような症状が現れているのか」を見て処方を考えます。

これが、かぜに使う漢方薬が一つではない理由です。

まとめ

「かぜには葛根湯」というイメージがありますが、実際には症状や時期、体力によって選ばれる漢方薬は異なります。

かぜのひきはじめでは、葛根湯・麻黄湯・麻黄附子細辛湯・桂枝湯などを症状に応じて使い分けます。

さらに症状が変化すれば、鼻水には小青竜湯、のどの痛みには桔梗湯、強い咳や喘鳴には麻杏甘石湯、乾いた咳や痰の切れにくい咳には麦門冬湯などが選択肢になります。

大切なのは、

「かぜだから、この漢方薬」ではなく、
「今、どんな症状が出ているのか」を見ること。

かぜの経過を見ながら、その時々の症状や体力に合った治療を考えることが大切です。

🌿 次回予告

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文責:総合内科専門医 内藤 修

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