- 9月 23, 2026
🌿 第6回 漢方シリーズ
胃腸の不調に使う漢方薬
~食欲不振・胃もたれ・お腹の張りを漢方で考える~
「最近、食欲がない」
「食べるとすぐ胃がもたれる」
「お腹が張って苦しい」
「ストレスがかかると胃腸の調子が悪くなる」
胃腸の不調は、外来でよく相談される症状の一つです。
胃薬というと、胃酸を抑える薬や胃の動きを改善する薬などを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、検査では大きな異常がなくても、胃もたれやお腹の張り、食欲不振などが続くことがあります。
このような場合、症状や体質によっては漢方薬が治療の選択肢になることがあります。
漢方では、
- 食欲が低下している
- 胃がもたれる
- お腹が張る
- 下痢をしやすい
- 胃が痛む
- 冷えると悪化する
など、症状の組み合わせをみながら、その方に合った処方を考えます。
今回は、胃腸の不調に使われる代表的な漢方薬をご紹介します。
同じ胃腸の不調でも、選ぶ漢方薬は違います
「胃の調子が悪い」といっても、症状は一人ひとり違います。
たとえば、
「食欲がなく、胃がもたれる」
という方と、
「お腹が張ってゴロゴロして、下痢をする」
という方では、同じ胃腸の不調でも状態が違います。
さらに、
「冷えると胃が痛くなる」
という方もいます。
西洋医学では、症状や経過から必要な検査を行い、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの病気がないかを確認します。
漢方では、それに加えて、第2回でご紹介した「証」や、第3回の「気・血・水」なども手がかりにしながら処方を考えます。
つまり、
「胃が悪いから、この漢方薬」
と一つに決めるわけではありません。
胃腸の不調に使われる代表的な漢方薬
今回は、当院でも処方することがある代表的な3つ、
①六君子湯(りっくんしとう)
②半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
③安中散(あんちゅうさん)
をみてみましょう。
図1.胃腸の不調に使われる代表的な3つの漢方薬

① 六君子湯 ― 食欲不振・胃もたれに
六君子湯は、胃腸が弱く、
- 食欲がない
- 胃がもたれる
- 少し食べただけでお腹がいっぱいになる
- 疲れやすい
といった方に使われることがある漢方薬です。
「食べたいけれど、少し食べるともう入らない」
「以前より食事量が減った」
といった訴えも、処方を考える手がかりになります。
六君子湯は、機能性ディスペプシアなどの上部消化管症状に対しても用いられています。
機能性ディスペプシアでは、胃カメラなどで症状の原因となる大きな異常がみつからなくても、胃もたれや早期満腹感、みぞおちの痛みなどが続きます。
ただし、
「食欲がない=六君子湯」
と決めるわけではありません。
食欲低下には、胃腸以外の病気や薬剤など、さまざまな原因があります。
特に食欲低下とともに体重が減っている場合には、まず原因を確認することが大切です。
② 半夏瀉心湯 ― お腹の張り・ゴロゴロ・下痢傾向に
半夏瀉心湯は、
- お腹が張る
- お腹がゴロゴロする
- 下痢をしやすい
といった場合に使われることがあります。
「胃がすっきりしない」
「便も安定しない」
など、胃から腸にかけて複数の症状がある方で選択肢になることがあります。
また、ストレスなどをきっかけに腹痛や下痢、便通異常が続く過敏性腸症候群(IBS)などで、症状に応じて処方することもあります。
ただし、慢性的な下痢や腹痛には別の病気が隠れている場合があります。
血便、発熱、体重減少などを伴う場合には、漢方薬だけで様子をみず、原因を確認することが大切です。
③ 安中散 ― 胃痛・胸やけ、冷えで悪化する症状に
安中散は、
- 胃が痛む
- 胸やけがする
- 胃がもたれる
- 冷えると胃の症状が悪くなる
といった場合に使われることがある漢方薬です。
「寒い日に胃が痛くなる」
「冷たいものをとると胃の調子が悪くなる」
といった訴えも、漢方薬を選ぶ手がかりになります。
同じ胃痛でも、
冷えとの関係があるのか
食欲低下が目立つのか
お腹の張りや下痢を伴うのか
などによって、選ぶ漢方薬は変わることがあります。
これが、第2回でご紹介した「証」を実際の診療に当てはめる考え方です。
胃腸とストレスは深く関係しています
「仕事が忙しくなると胃が痛む」
「緊張すると下痢をする」
「心配事があると食欲がなくなる」
という方もいます。
胃腸と脳は互いに影響し合っているため、ストレスや不安によって胃腸症状が悪化することがあります。
そのため、胃腸だけでなく、
いつ症状が起こるのか
何をすると悪化するのか
ほかにどんな症状があるのか
なども確認します。
胃腸症状では、まず原因を確認することが大切です
胃もたれや食欲不振、お腹の張りのすべてが、漢方薬で様子をみてよい症状ではありません。
胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胆石症、膵臓がん、炎症性腸疾患など、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
特に、
- 急に強い腹痛が起こった
- 吐血や黒い便が出た
- 血便がある
- 嘔吐を繰り返す
- 発熱を伴う
- 食欲低下や体重減少が続く
- 症状が次第に悪化している
といった場合には、漢方薬で様子をみるのではなく、原因を確認することが大切です。
まず重大な病気を見逃さないことが必要です。
🌿 院長からのワンポイント
胃腸症状の患者さんを診察するとき、
「胃がもたれます」
という一言だけでは、まだ処方は決まりません。
私は、
食欲はどうか
少し食べただけで満腹になるか
お腹は張るか
下痢や便秘はないか
冷えると悪くなるか
ストレスとの関係はあるか
などを確認します。
たとえば、
「食欲がなく、少し食べると胃がもたれる」
という方と、
「お腹が張ってゴロゴロし、下痢もしやすい」
という方では、
同じ「胃腸の不調」でも処方の候補は変わります。
大切なのは、
「病名だけで漢方薬を決めない」
ことです。
西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方医学の考え方を組み合わせる、診療の考え方を大切にしています。
まとめ
胃腸の不調には、食欲不振、胃もたれ、お腹の張り、胃痛、胸やけ、下痢など、さまざまな症状があります。
代表的な漢方薬として、
六君子湯・半夏瀉心湯・安中散
などがあります。
六君子湯は食欲不振や胃もたれ、半夏瀉心湯はお腹の張りや下痢傾向、安中散は胃痛や冷えとの関係などが、処方を考える手がかりになります。
ただし、一つの症状だけで漢方薬を決めるものではありません。
症状の組み合わせや体質、「証」をみながら、その方に合った漢方薬を考えます。
そして、胃腸症状には別の病気が隠れていることもあります。
西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方医学の考え方を組み合わせる。
それが大切です。
次回予告
🌿 第7回 漢方シリーズ
便秘に使う漢方薬
~便秘にも「タイプ」がある? 漢方薬の使い分け~
「便が硬くて出にくい」
「高齢になって便秘がひどくなった」
「お腹が張ってすっきりしない」
便秘にも、症状や体質によってさまざまなタイプがあります。
次回は、大黄甘草湯・麻子仁丸・防風通聖散などを取り上げながら、便秘に使われる漢方薬の違いをご紹介します。
漢方薬について、このようなお悩みはありませんか?
- 西洋薬だけでは症状がなかなか改善しない
- 冷えや便秘、食欲低下などが続いている
- 更年期症状で困っている
- 漢方薬が自分に合うのか相談してみたい
漢方薬は、
患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて処方する「医療用医薬品」です。順聖クリニックでは、西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方薬も組み合わせ、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
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漢方薬シリーズを読む
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[~西洋医学と組み合わせる、現代の漢方診療~]
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[~補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯をどう使い分ける?~]
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文責:総合内科専門医 内藤 修
