• 3月 29, 2026

がんは2人に1人の時代|医師が解説する“4つの誤解”と正しい備え【第1回】

がんは「情報戦」予防から治療、社会復帰まで見直すべき4つの誤解

はじめに

「2人に1人ががんになる時代」です。
それでも多くの人が、「自分はまだ大丈夫」と思っています。

がんは、55歳以降に急激に増加します。
一方で、検査や治療は年々進歩しており、早期発見できれば多くは治る時代になっています。

しかし実際には、
・検診を受けていない
・誤ったイメージを持っている
・正しいタイミングを逃している
こうした理由で、治療のチャンスを逃している人も少なくありません。

👉 がん対策は「情報戦」です。
検診を受けるか、いつ受診するか、どの治療を選ぶか――
そのすべてが「正しい知識」によって決まります。

第1回では、「がんの4つの誤解」を整理します。

第1回の今回は、ありがちな「がんの4つの誤解」を取り上げる。間違った捉え方を正して、がんの「情報戦」を生き抜こう!

第1回 55歳を過ぎるとがんは一気に増加! 今すぐ備えを!

正しく知れば、有効な治療をタイミングよく受けられる

日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性65.5%、女性51.2%。今やがんは男女ともに「2人に1人」がかかる病気で、決してまれなものではありません。あなたの周りにも、がんにかかった経験がある人、あるいはがんで亡くなった人が1人はいるのではないでしょうか。

2人に1人となれば、あなた自身もがんにかかる可能性はあります。なのに人はどうしても「自分だけはかからない」と根拠もなく思いたがるものです。一方、ドラマなどのイメージから「がんは死に直結する病気」と捉えている人も多いです。

がんとの戦いはいわば「情報戦」です。ちまたにあふれる玉石混交の情報の中から適切なものを選び、がんについて正しい情報を得ておかないと、早期のがんをみすみす見逃してしまいます。さらには、有効、かつ体への負担が少ない治療を受けられるタイミングも逃していくことになります。

がんにかかる人は、男性では55歳以降に一気に増加します。がんは働き盛りで家計を支える世代を襲い、家族にも大きな影響をもたらしますと警鐘が鳴らされています。

がんは働き盛りを襲う


以前からの思い込み、間違っていませんか?


第1回は、私たちが抱きがちな「がんに関する間違ったイメージ」について振り返ってみましょう。あなたは以下のような思い込みを持っていないでしょうか?

実はこれら4つとも、正しいとは言えない。

がんにも「安全運転」と「シートベルト」がある

【誤解1】がんは死に至る病だ

→ がんは生活習慣と早期発見で命を救うことが可能な病気だ
がん全体では約6割が生存し、早期であれば9割以上が治癒可能とされています。

👉 「自分は大丈夫」と思っている方ほど、一度チェックを。
気になる方は、お気軽にご相談ください。


身内ががんになったり、自身ががんだと診断されると、どんなにタフな人でも動揺します。「がん=死に至る病」と思っていると、動揺がさらに大きくなり、冷静にその後の対策ができなくなる可能性があります。

しかし、「最新の国内の統計では、がん全体では6割の人が、早期の段階でがんを見つけられれば9割以上の人が、完治します。

早期発見できれば9割以上が完治するなら、とてもひとくくりに「死に至る病」とはいえないのが分かります。

今の中年・高年世代は、学校の保健体育でがんについて学習しませんでしたが、現在は中学校と高校では学習指導要領によってがん教育が義務づけられています。中高年世代は正しい知識を得ていない一方、ドラマの主人公ががんにかかると、たいてい亡くなるのを目にしてきました。しかし今日限りで、がんは死に至る病というイメージは払拭してくださいといわれています。

「がん」を「交通事故」に例えて説明する(図1)。

私たちは交通事故に遭わないために、安全運転をします。運悪く事故に巻きこまれたときにもシートベルトが命を救ってくれます。それと同じで、日頃から発症に影響する生活習慣に気を配る(安全運転)こと、さらにがん検診を受診する(シートベルト)ことで、がんで命を落とすリスクを確実に減らすことができます。がんは遺伝子のコピーミスによって起きるため、どんなに注意していても運悪く発症してしまうこともありますが、それでも早期発見で命を救うことができます。

図1

私たちは交通事故に遭わないために日頃から安全運転を心掛け、もし事故に遭っても命を守るためにシートベルトをします。がん対策もそれと同様で、生活習慣の改善と、がん検診による早期発見をセットで行うことが重要です。

手術でがんを取り去ることができた場合などに「完治」「治癒」と表現します。しかし、再発や転移の可能性もあるため、術後、一定の期間は体の状態を確認する診療が必要です。がんでは通常、術後5年間再発しなければ完治したとみなされます。

がんは「コントロール可能」な病気である

【誤解2】がんになる・ならないは遺伝の影響が大きい

→ 遺伝が影響するがんはがん全体の5%。がんはコントロール可能

👉 つまり、「遺伝だから仕方ない病気」ではなく、
生活習慣でリスクを下げられる病気です。


がんは遺伝すると、なんとなく思っている人がいるかもしれません。確かに生まれつきがんになりやすい体質を持っている場合があり、それが原因で発症するがんを「遺伝性腫瘍(家族性腫瘍)」と呼びます。

特定の遺伝子に家系的な変異があり、その遺伝子の変異が受け継がれることにより特定のがんを発症しやすくなるのが家族性腫瘍ですが、家族性腫瘍はがん全体の5%にすぎません。がんは遺伝する病気、という捉え方は誤解です。

この家族性腫瘍の代表が「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。発症原因はBRCA1、BRCA2遺伝子の変異で、親から子に約50%の確率で受け継がれます。その名の通り、乳がんと卵巣がんのリスクが非常に高くなり、米俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんもこのBRCA1遺伝子に変異があることが遺伝子検査によって判明し、乳房と卵巣、卵管の摘出手術を受けたことを公表し話題となりました。

がんは細胞分裂の際に、細胞の設計図である遺伝子のコピーミスが起こった細胞が無秩序に増え続けることから生じるため、“遺伝子の病気”とも言えます。だから“がんは遺伝する”と誤解されやすいのかもしれません。しかし、ほとんどの遺伝子の傷は生まれた後に後天的に生じるものです。がん細胞に後天的に起こった遺伝子変異は次の世代には遺伝しません。

また、実の親や兄弟でがんになった「がん家族歴」があるとがんになりやすいとも言われ、確かに食道がん、膵臓がん、膀胱がんなどでは家族歴ががん発症に関与するという研究もあります。しかし、がんのリスクを高めるような生活環境を共有することによりリスクが上がるという見方もあります。がん発症には、家系よりも圧倒的に生活習慣の関わりが強く、生活習慣の関わりが強い病気は、そうでない病気と比べてよりコントロールしやすいです。

入院は短期化へ 通院治療も増えている

誤解3】がんになると長期入院が必要で、仕事との両立は不可能

→ 早期なら治療の多くは通院で可能
👉 「がん=仕事を辞める」は、すでに過去の常識になりつつあります。


がんになると、体力的に大丈夫か、職場に迷惑がかかるのでは、などと考え、退職を考える人も多い。約1万2000人のがん患者を対象にした最新の全国調査でも、40歳以上のがん患者でがんと診断されたときに退職・廃業した人は18.5%いました。しかし、仕事を続けることは安心して治療を受けるための経済的基盤をもたらすだけでなく、生きがいにもなります。早まって退職するのは避けたいです。

今、がん治療は、通院治療に大きくシフトしています。入院せず仕事をしながらの通院が可能です。がんは働き盛りの55歳以降に増加するため、会社勤めをしながらがん治療をする人は今後も増えていきます。一時的な休職や時短勤務でサポートするなど、企業側の理解と柔軟な対応が重要とされています。

がん患者の入院日数も近年短くなってきており、2002年には平均35.7日だったのが2020年は19.6日程度と、2週間以上も短縮しています。胃がんや大腸がんは、早期であれば内視鏡による日帰り手術も可能です。また、放射線治療も抗がん剤治療も、通院で行うのが主流になっている。早期で発見するほど、治療による体への負担も、金銭的な負担も少なく済みます。

ただし、がんの種類や病状により経過は異なり、治療の副作用には個人差があります。自身の仕事の働き方を主治医に説明した上で、今後の体調変化や治療の見通しについて相談したり、雇用先の人事や総務担当、同僚、そして家族とともに、できること、できないことを丁寧に話し合うことが大切といえます。

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬にも期待

【誤解4】ステージ4だと、長く生きられない

→ 病期が進むほどに生存率は下がるが、新たな治療薬も登場している
👉 ステージ4でも「治療できる病気」へと変わりつつあります。
👉 がんは“諦める病気”ではありません


がんは、
「怖いから考えない病気」ではなく、
正しく知って備える病気です。

すべてを完璧にやる必要はありません。
まずは一つでいい。

👉 「今年、がん検診を受ける」

ここから始めてみてください。

次回は、
科学的に効果が証明されている
「がん予防の5つの習慣+1」について解説します。

がんが体の一部分にとどまっている早期がんか、広い範囲に広がっている進行がんかの指標となるのが「病期(ステージ)」です。それぞれのがんでは病期が大きく0~Ⅳ期の5つに分類されています。ステージ4と言われるⅣ期に近づくほどがんが広がり、進行していることを示します。病期が進むと、生存率が下がります。

がん部位別臨床病期別5年相対生存率

ステージ4になると、がん細胞が生まれた場所とは別の臓器への転移が起こり、治療も難しくなり、生存率が下がるのは確かです。ただし、ステージ4に進行したがんであっても、近年、細胞ががん化する原因の分子を攻撃する分子標的薬や、患者の免疫の力でがん細胞を排除する免疫チェックポイント阻害薬が登場し、治療の幅が広がり、生存率が向上するケースもあります。

新しい治療薬への期待は高まりますが、そうはいっても、一番大切なのは「がんにかからないような生活習慣で予防すること」「がん検診で早期発見をすること」です。さて、多くの病気の予防では食事と運動が両輪となりますが、がんの場合も同じことが言えるのだろうか。次回は、私たちが今日からでも始められる手立てとして、科学的に効果が証明されている「がんを予防する方法」について深掘りします。

まずは一度、ご自身の健康状態を見直してみませんか。
当院では、がん検診や生活習慣のご相談も随時受け付けています。
「何から始めればいいか分からない」という方も、お気軽にご相談ください。

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がん対策、何から始めるか迷っていませんか?

当院では、がん検診のご相談や生活習慣の見直しについて、
お一人おひとりに合わせてご案内しています。

「まだ症状はないけど不安」
「検診を受けるタイミングが分からない」

そんな方こそ、一度ご相談ください。
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👉 まずは今年のがん検診の予定を確認してみましょう。
迷った場合は、かかりつけ医への相談が第一歩です。


次回は、がんは予防できる時代です|医師が教える「5つの習慣+1」【第2回】をレビーします。

文責:総合内科専門医 内藤 修

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