• 9月 17, 2026

🌿第5回 漢方シリーズ

頭痛・めまいに使う漢方薬

~同じ頭痛・めまいでも、選ぶ漢方薬が違う?~

「雨が降る前になると頭が痛い」

「冷えると頭痛がひどくなる」

「頭痛と一緒に吐き気がする」

「めまいとむくみが一緒に起こる」

頭痛やめまいは、外来でよく相談される症状です。

しかし、同じ「頭痛」「めまい」でも、症状の現れ方は一人ひとり違います。

漢方では、病名だけでなく、冷え、吐き気、むくみ、天候との関係などもみながら、その方の症状や体質、「証」に合った漢方薬を考えます。

今回は、頭痛やめまいに使われる代表的な漢方薬をご紹介します。

同じ頭痛でも、選ぶ漢方薬は違います

頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛など、さまざまなタイプがあります。

西洋医学では、頭痛の特徴や経過、随伴症状などから診断し、必要な治療を行います。

漢方では、それに加えて、

  • 冷えると悪化する
  • 天候が悪くなると頭が痛む
  • 吐き気を伴う
  • めまいやむくみがある
  • 頭が重い
  • 手足が冷える

といった症状も、処方を考える手がかりになります。

つまり、

「頭痛だから、この漢方薬」

と一つに決めるわけではありません。

第2回でご紹介した「証」、第3回の「気・血・水」の考え方が、ここでも実際の漢方薬選びにつながります。

頭痛に使われる代表的な漢方薬

頭痛に用いられる漢方薬はいくつもあります。

今回は特徴の異なる代表的な3つ、

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

五苓散(ごれいさん)

釣藤散(ちょうとうさん)

をみてみましょう。

図1.頭痛に使われる代表的な3つの漢方薬

頭痛に使われる呉茱萸湯・五苓散・釣藤散の特徴を比較した図
呉茱萸湯・五苓散・釣藤散は、頭痛に用いられる代表的な漢方薬です。同じ頭痛でも、症状や体質、「証」などをみながら処方を選びます。

① 呉茱萸湯 ― 冷えや吐き気を伴う頭痛に

呉茱萸湯は、冷えを伴う頭痛に使われる代表的な漢方薬です。

  • 冷えると頭痛が悪化する
  • 頭痛とともに吐き気がする
  • 手足が冷える

といった症状が、処方を考える手がかりになります。

頭痛というと「冷やす」イメージがありますが、漢方では冷えが関係する頭痛もあります。

このような場合には、身体を温める方向の漢方薬が選ばれることがあります。

呉茱萸湯は独特の苦味がある漢方薬ですが、症状に合っている方では継続して服用されることもあります。

② 五苓散 ― 天候変化で悪化する頭痛やめまいに

五苓散は、当院でも頭痛やめまい、むくみなどに処方することがある漢方薬です。

特に、

「雨が降る前になると頭が痛い」

「低気圧が近づくと頭が重くなる」

という方では、五苓散を検討することがあります。

めまい、むくみ、吐き気などを一緒に訴える方もいます。

第3回では、身体の水分バランスの乱れを、漢方医学では「水」の乱れとして考えることをご紹介しました。

五苓散は、この「水」と関係の深い処方です。

ただし、西洋薬の利尿薬とまったく同じ考え方で使う薬ではありません。

単に、

「むくんでいるから五苓散」

「雨の日の頭痛だから五苓散」

と決めるのではなく、ほかの症状もみながら処方を考えます。

③ 釣藤散 ― 慢性的な頭痛や頭重感に

釣藤散は、特に中年以降の慢性的な頭痛や頭重感などに使われることがあります。

  • 慢性的な頭痛
  • 頭が重い
  • めまい
  • 耳鳴り

などが、処方を考える手がかりになります。

頭痛が長く続いていると、「いつもの頭痛」と考えてしまうことがあります。

しかし、頭痛の性質が変わった場合や、これまでにない症状が加わった場合には、ほかの病気が隠れていないか確認することも大切です。

必要な診察を行ったうえで、症状に合えば釣藤散などを選択します。

めまいでは、ほかの漢方薬を選ぶこともあります

めまいも、

「ぐるぐる回る」

「ふわふわする」

「立っていると不安定になる」

など、患者さんによって感じ方が違います。

めまいに五苓散を使うこともありますが、それ以外の漢方薬が適する場合もあります。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

苓桂朮甘湯は、

  • めまい
  • ふらつき
  • 動悸
  • 息切れ

などがみられる場合に使われることがあります。

五苓散と同じく「水」が関係する処方ですが、同じめまいでも症状の組み合わせによって選ぶ漢方薬は異なります。

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

半夏白朮天麻湯は、胃腸が弱く、身体が冷えやすい方のめまいや頭痛などに使われることがあります。

  • めまい
  • 手足の冷え
  • 胃腸が弱い
  • 疲れやすい

といった症状が重なる場合です。

当院では処方する機会は多くありませんが、めまいに使う漢方薬にもさまざまなタイプがあります。

頭痛やめまいでは、まず原因を確認することが大切です

頭痛やめまいのすべてが、漢方薬で様子をみてよい症状ではありません。

頭痛には、脳出血やくも膜下出血など、緊急性の高い病気が隠れていることがあります。

めまいでも、脳血管障害などが原因となることがあります。

特に、

  • 突然起こった、これまでにない激しい頭痛
  • 手足の麻痺やしびれ
  • ろれつが回らない
  • 意識がおかしい
  • 物が二重に見える
  • 歩けないほどの強いめまい

などがある場合には、漢方薬で様子をみず、速やかな受診が必要です。

また、以前から頭痛がある方でも、

「いつもの頭痛と違う」

という変化は重要です。

まず必要な病気を見逃さないこと。そのうえで漢方薬を治療に取り入れることが大切です。

🌿 院長からのワンポイント

頭痛やめまいの患者さんを診察するときには、「頭が痛い」「めまいがする」という症状だけではなく、

いつ起こるのか、何をすると悪化するのか、ほかにどんな症状があるのか

を確認することが大切です。

たとえば、

「雨が降る前になると頭が痛い」

「冷えると頭痛が悪化して、吐き気もする」

では、同じ頭痛でも症状の現れ方が違います。

また、頭痛やめまいには、脳や耳などの病気が隠れていることもあります。

まず西洋医学的に必要な診断を行い、そのうえで症状や体質、「証」に合えば漢方薬も選択肢になります。

まとめ

同じ頭痛やめまいでも、症状の現れ方は一人ひとり違います。

頭痛に使われる代表的な漢方薬には、

呉茱萸湯・五苓散・釣藤散

などがあります。

また、めまいでは、

五苓散・苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯

などが選ばれることがあります。

大切なのは、

「頭痛だからこの漢方薬」
「めまいだからこの漢方薬」

と一つの症状だけで決めないことです。

症状の組み合わせや体質、「証」をみながら、その方に合った漢方薬を考えます。

そして、必要な病気を見逃さないことが何より大切です。

西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方医学の考え方を組み合わせる。

それが当院で大切にしている診療の考え方です。

次回予告

🌿 第6回 漢方シリーズ

胃腸の不調に使う漢方薬

~食欲不振・胃もたれ・お腹の張りを漢方で考える~

「食欲がない」

「胃がもたれる」

「お腹が張って苦しい」

胃腸の不調にも、症状や体質によってさまざまな漢方薬が使われます。

次回は、六君子湯・半夏瀉心湯など、当院でも実際に処方する漢方薬を取り上げながら、胃腸症状に対する漢方薬の使い分けをご紹介します。

漢方薬について、このようなお悩みはありませんか?

  • 西洋薬だけでは症状がなかなか改善しない
  • 冷えや便秘、食欲低下などが続いている
  • 更年期症状で困っている
  • 漢方薬が自分に合うのか相談してみたい

漢方薬は、
患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて処方する「医療用医薬品」です。

順聖クリニックでは、西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方薬も組み合わせ、一人ひとりに合った治療をご提案しています。

気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

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漢方薬シリーズを読む

第1回 漢方薬ってどんな薬?
[~西洋医学と組み合わせる、現代の漢方診療~]

第2回 「証(しょう)」って何?
[~同じ病気でも処方が違う理由~]

第3回 「気・血・水」とは?
[~漢方医学の基本をやさしく解説~]

第4回 更年期に使う漢方薬
[~同じ更年期でも、選ぶ漢方薬が違う理由~]

第5回 頭痛・めまいに使う漢方薬
[~同じ頭痛・めまいでも、選ぶ漢方薬が違う?~]

第6回 胃腸の不調に使う漢方薬
[~食欲不振・胃もたれ・お腹の張りを漢方で考える~](公開予定)

第7回 便秘に使う漢方薬
[~便秘のタイプによって選ぶ漢方薬は違う?~](公開予定)

第8回 疲れ・体力低下に使う漢方薬
[~補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯をどう使い分ける?~](公開予定)

第9回 不眠・不安・イライラに使う漢方薬
[~眠れない・不安・イライラを漢方ではどう考える?~](公開予定)

第10回 冷えに使う漢方薬
[~手足の冷え・冷え症にもタイプがある?~」(公開予定)

第11回 むくみに使う漢方薬
[~「水」の乱れから考える漢方薬の使い分け~](公開予定)

第12回 かぜに使う漢方薬
[~葛根湯だけじゃない?症状や時期で選ぶ漢方薬~](公開予定)

第13回 漢方薬の飲み方と副作用
[~「漢方だから安全」とは限らない?知っておきたい注意点~](公開予定)

文責:総合内科専門医 内藤 修

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