- 8月 22, 2026
【第4回 慢性便秘症シリーズ】
便秘薬はどれも同じではありません
― 酸化マグネシウムから新しい便秘薬まで ―
「便秘薬を飲んでいるのに改善しません」
外来では、このようなご相談を受けることが少なくありません。
「もっと強い便秘薬に変えた方がいいでしょうか?」
「薬の量を増やせば治りますか?」
そう思われる方も多いのですが、実は便秘薬を強くしたり増やしたりすることだけが解決策ではありません。
第3回でご紹介したように、慢性便秘症の原因は一つではなく、
- 食事や水分不足
- 運動不足
- 加齢
- 病気
- お薬の副作用
など、さまざまな要因が関係しています。
原因が違えば、必要となる治療も変わります。
そのため私たち総合内科医は、「どの便秘薬を出そうか」よりも先に、
「なぜこの方は便秘になっているのだろう?」
という視点から診療を始めます。
便秘薬にはそれぞれ役割があります
便秘薬というと、「強い薬」「弱い薬」というイメージを持たれる方もいらっしゃいます。
しかし実際には、薬ごとに作用する場所や働き方が異なります。
大きく分けると、
- 浸透圧性下剤
- 上皮機能変容薬
- 胆汁酸トランスポーター阻害薬
- 刺激性下剤
- 漢方薬
などがあります。
大切なのは、「どれが一番強い薬か」ではなく、
**「その方の便秘に合っているかどうか」**です。
基本となる便秘薬
酸化マグネシウム®とモビコール®
まず基本となるのが、便をやわらかくするタイプのお薬です。
酸化マグネシウム®
長年使用されている代表的な便秘薬です。
腸の中へ水分を集め、便をやわらかくすることで、自然な排便を促します。
比較的穏やかな作用のため、多くの患者さんで第一選択薬として使用されています。
ただし、高齢者や慢性腎臓病(CKD)の患者さんでは、高マグネシウム血症に注意が必要です。
当院でも、腎機能や必要に応じて血液検査を確認しながら、安全に継続できるよう心掛けています。
モビコール®
近年使用される機会が増えている便秘薬です。
マクロゴール4000という成分が腸の中に水分を保持し、便を自然な硬さに近づけます。
酸化マグネシウムとは異なる仕組みで作用するため、患者さんによってはこちらの方が適している場合もあります。
新しい便秘治療薬
図1. 代表的な便秘治療薬

近年、慢性便秘症の治療は大きく進歩しました。
従来のように「腸を刺激する」だけではなく、腸の水分分泌や胆汁酸の働きを利用する薬が登場しています。
代表的なお薬には、
- アミティーザ®(ルビプロストン)
- リンゼス®(リナクロチド)
- グーフィス®(エロビキシバット)
などがあります。
これらは作用の仕組みが異なるため、便秘のタイプや患者さんの状態に応じて使い分けられています。
それぞれの便秘薬に注意点があります
どのお薬にも、効果だけでなく注意すべき点があります。
アミティーザ®では悪心(吐き気)や腹痛が比較的みられやすく、リンゼス®、グーフィス®、モビコール®でも、下痢、腹痛、悪心、頭痛などの副作用がみられることがあります。
副作用の種類や頻度には薬ごとの特徴があるため、症状や体質、年齢などを考慮しながら薬を選択することが大切です。
当院では、副作用が心配な患者さんでは少量から開始したり、服用方法を工夫したりしながら、無理なく継続できる治療を心掛けています。
薬は「効けばよい」だけではありません。
安心して続けられることも、慢性便秘症治療では大切なポイントです。
刺激性下剤との上手な付き合い方
プルゼニド®(センノシド)、ラキソベロン®(ピコスルファートナトリウム)、アローゼン®(センナ・センナ実顆粒)などは、腸を刺激して排便を促すお薬です。
即効性があるため、「数日排便がない」といった場面では非常に役立ちます。
一方で、毎日の基本治療として漫然と続ける薬ではありません。
長期間使用すると、
- 腹痛や下痢
- 大腸メラノーシス(大腸黒皮症)
- 脱水や電解質異常
などに注意が必要です。
また、長期間続けることで薬に頼り過ぎる状態になってしまうこともあるため、定期的に治療内容を見直すことが大切です。
当院では、刺激性下剤は「困った時の助っ人」と考え、必要最小限の使用を心掛けています。
漢方薬という選択肢
便秘治療では、漢方薬も重要な役割を担っています。
代表的なものとして、
- 麻子仁丸
- 潤腸湯
- 大黄甘草湯
- 桂枝加芍薬大黄湯
- 防風通聖散
などがあります。
漢方薬は、便秘だけを見て選ぶのではなく、体質(証)や腹部所見、冷えや体力なども考慮して処方します。
西洋薬とは異なる視点から治療できることも漢方の魅力です。
漢方薬については、今後予定している漢方シリーズで詳しくご紹介する予定です。
総合内科医が考える便秘治療
慢性便秘症では、
「便秘だから便秘薬を追加する」
という診療だけでは十分ではありません。
例えば、
- 糖尿病による神経障害
- 甲状腺機能低下症
- パーキンソン病
- 睡眠薬や抗うつ薬などによる薬剤性便秘
- 慢性腎臓病(CKD)
などが背景に隠れていることがあります。
また、高齢者では複数のお薬を服用されていることも多く、現在飲んでいる薬を見直すことが便秘改善につながる場合も少なくありません。
そのため当院では、
「どの薬を追加するか」
だけではなく、
「なぜ便秘になったのか」
を一緒に考えながら治療を進めています。
生活習慣の改善、食事や水分、運動、服用中のお薬、基礎疾患などを総合的に評価し、その方に合った治療を組み立てることが、慢性便秘症では最も大切だと考えています。
便秘治療は、「薬を増やすこと」ではなく、「その方に合った治療を選ぶこと」が何より大切です。
まとめ
便秘薬は、どれも同じではありません。
それぞれ作用の仕組みが異なり、患者さんの症状や体質、年齢、基礎疾患、服用中のお薬によって、適した治療は変わります。
便秘薬は「強い薬」を選ぶ時代ではありません。
患者さん一人ひとりの便秘の原因を考え、その人に合った治療を選ぶことが、慢性便秘症治療で最も大切です。
便秘が長く続いている方、市販薬が手放せない方、便秘薬を飲んでも十分な効果が得られない方は、一度お気軽にご相談ください。
便秘でお困りの方へ
便秘は、排便回数だけでなく、便の硬さ、強いいきみ、残便感など、症状や原因が人によって異なります。
「年齢のせい」「いつもの便秘だから」と我慢せず、便秘が続いて生活に支障を感じる場合や、市販の便秘薬を長く使用している場合は、一度ご相談ください。
当院では、生活習慣や現在服用しているお薬、腎機能なども確認しながら、一人ひとりの状態に合わせた治療を一緒に考えていきます。
慢性的な便秘でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
▶ 問い合わせ、初診のご予約・ご相談はこちら
(📞055-251-2121)(WEB予約)
慢性便秘症シリーズを読む
第1回 慢性便秘症とは?
[毎日出なくても便秘ではない?慢性便秘症の正しい定義]
第2回 慢性便秘症ガイドライン2023で何が変わった?
[便秘治療は新しい時代へ]
第3回 なぜ便秘になるの?
[食事だけではない「5つの原因」]
第4回 便秘薬はどれも同じではありません
[酸化マグネシウムから新しい便秘薬まで]
文責:総合内科専門医 内藤 修
