• 6月 7, 2026

第4回 脂肪肝シリーズ|お酒好きの方へ

― アルコール性脂肪肝とは? ―

「お酒は毎日飲むけれど、そんなに多くない」
「健康診断で肝機能が高いと言われたけれど、お酒はやめたくない」
「飲む量を減らした方がよいのは分かっているけれど、なかなか実行できない」

外来でも、このようなお話をよく伺います。

しかし実際には、アルコール習慣そのものが脂肪肝を進行させる原因になることがあります。

特に近年は、

  • ストロング系チューハイ
  • 甘いサワー
  • 缶ハイボール
  • カクテル類

など、“飲みやすいお酒”による脂肪肝や肥満が問題になっています。

お酒を楽しむことは、長年続けてきた生活習慣の一つです。だからこそ、いきなり「今日から禁酒してください」と言われても、簡単には実行できない方が多いのではないでしょうか。

順聖クリニックでは、飲酒量が多い方に対して、まず次のようにお話ししています。

「まずは、お酒の量を半分にしてみましょう」

そして、一般的な減酒の目安として、1日の純アルコール量を20g程度まで減らすことを説明しています。

今回は、アルコールが肝臓に与える影響と、お酒を減らすための具体的な方法について解説します。

アルコールでも脂肪肝になります

脂肪肝というと、食べすぎや肥満、甘いものの取りすぎが原因だと思われがちです。

しかし、お酒の飲みすぎによっても、肝臓に脂肪がたまります。

アルコールは主に肝臓で分解されます。その過程で脂肪の代謝に変化が起こり、肝臓に中性脂肪が蓄積しやすくなります。

これが、いわゆるアルコール性脂肪肝です。

飲酒量が多い状態が長く続くと、脂肪肝だけでなく、アルコール性肝炎や肝線維化、肝硬変へと進行する場合があります。

しかも、脂肪肝の初期には自覚症状がほとんどありません。

そのため、健康診断でALTやγ-GTPが高いと指摘されたことが、肝臓の異常に気づくきっかけになる場合があります。

ただし、肝機能の数値だけでアルコールが原因と決めつけることはできません。肥満や糖尿病、薬剤、ウイルス性肝炎など、ほかの原因も含めた評価が必要です。

お酒だけでなく、おつまみにも注意しましょう

お酒を飲むと、食欲が増したり、ついつい食べすぎたりすることがあります。

特に、

  • 揚げ物
  • 脂っこい料理
  • 締めのラーメンやご飯
  • 夜遅い時間の食事

などが重なると、摂取エネルギーが増え、肥満や脂肪肝につながりやすくなります。

図1. 飲酒と高カロリーな“おつまみ”

飲酒に加えて高カロリーなおつまみを多く食べる習慣は、エネルギーの過剰摂取につながり、脂肪肝を悪化させることがあります。

「糖質ゼロのお酒」なら安心でしょうか?

最近は、糖質ゼロやプリン体ゼロをうたったアルコール飲料も増えています。

糖質を控えること自体には意味がありますが、糖質ゼロだからといって、アルコールの影響がなくなるわけではありません。

アルコールには、1g当たり約7kcalのエネルギーがあります。

また、糖質ゼロの飲料であっても、アルコール度数が高ければ、それだけ多くの純アルコールを摂取することになります。

図2. 糖質ゼロのお酒にもアルコールは含まれる

糖質ゼロでも、アルコール自体にはエネルギーがあります。糖質の表示だけでなく、アルコール度数と飲酒量にも注意しましょう。

特に注意したいストロング系のお酒

アルコール度数の高い缶チューハイなどは、飲みやすくても純アルコールの摂取量が多くなりがちです。

例えば、アルコール度数9%の500mL缶には、純アルコールが約36g含まれています。

同じ500mLでも、度数5%のビールなら純アルコールは約20gです。

つまり、お酒の量が同じでも、アルコール度数によって肝臓への負担は変わります。

「ビールをやめてハイボールにしたから大丈夫」というわけではありません。

大切なのは、お酒の種類だけでなく、実際に摂取している純アルコール量を知ることです。

「やめる」より「減らす」から始めましょう

お酒を飲む習慣を、いきなりすべて変えるのは難しいものです。

そこで当院では、飲酒量が多い方に、まず次のようにお話ししています。

「今まで飲んでいた量を、まず半分にしてみましょう」

例えば、

  • 毎日飲んでいた方は、飲まない日を増やす
  • 1日に飲むお酒の量を半分にする
  • アルコール度数の高いお酒を、低いものに変更する

といった方法です。

肝臓外科医の尾形哲先生も、著書の中で、飲酒習慣を一方的に否定するのではなく、まず酒量を減らすことの大切さを述べています。

もちろん、禁酒が必要な病状もあります。しかし、減酒から始めることが、飲酒習慣を見直す現実的な第一歩になる方もいます。

そして、飲酒量を減らした後は、肝機能の数値や体重がどのように変化するかを確認することが大切です。

純アルコール20gとは、どのくらいのお酒でしょうか?

お酒を減らすといっても、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーでは、アルコール度数が異なります。

そこで役立つのが「純アルコール量」という考え方です。

純アルコール量は、飲んだお酒の量とアルコール度数から計算できます。

図3. お酒の種類別・純アルコール20gの目安

ビール・日本酒・ウイスキー・焼酎・ワインの純アルコール約20gに相当する飲酒量の比較表
ビール、日本酒、ウイスキー、焼酎、ワインでは、同じ純アルコール量でも飲む量が異なります。飲酒量を見直す際の参考にしてください。

一般的な減酒の目安として、1日当たりの純アルコール量を20g程度まで減らすことをお伝えしています。

例えば、ビール5%なら500mLで純アルコール約20gです。

ただし、これは誰にとっても安全な飲酒量という意味ではありません。年齢や体質、持病、肝臓の状態などによって、適切な対応は異なります。

特に、アルコールが原因の肝障害が疑われる方や、すでに肝硬変などの肝疾患がある方では、禁酒を基本とした治療が必要です。

飲酒量を減らしたら、肝機能を確認しましょう

飲酒量を減らすことで、ALTやγ-GTPなどの肝機能検査値が改善する方もいます。

また、お酒と一緒に食べる量が減れば、体重の改善につながることもあります。

ただし、数値の変化には個人差があり、改善しない場合には別の原因が隠れている可能性もあります。

健康診断で肝機能異常を指摘された方は、飲酒量を見直すだけで終わりにせず、医療機関で再検査を受けましょう。

必要に応じて、腹部エコーなどで肝臓の状態を確認することも大切です。

まとめ

お酒が好きな方にとって、飲酒習慣を変えることは簡単ではありません。

だからこそ、私は外来で、まずこうお話ししています。

「まずは半分にしてみましょう。そして、純アルコール20g程度を一つの目安にしてみましょう」

最初から完璧を目指す必要はありません。

まずは今の飲酒量を知り、減らすことに取り組み、その後の肝機能や体重の変化を確認する。

その積み重ねが、肝臓を守るための大切な一歩になります。

ただし、肝障害が進んでいる方、禁酒が必要な方、アルコール依存症が疑われる方では、減酒だけでは十分ではありません。また、飲酒量が非常に多い方は、急な断酒によって離脱症状が起こる場合があるため、医療機関への相談が必要です。

お酒と上手に付き合うためにも、まずはご自身の肝臓の状態を知ることから始めましょう。

参考資料

尾形 哲 著『甘い飲み物が肝臓を殺す』(幻冬舎新書)

厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年)

脂肪肝シリーズを読む

▶ 第1回 「健康診断でALTが高い方へ」
~脂肪肝(MASLD)は放置してはいけません~


▶ 第2回 「脂肪肝を改善したい方へ」
~まず「甘い飲み物」を見直しましょう~


▶ 第3回 「最近つまずく方へ」
~筋力低下(サルコペニア)と脂肪肝の関係~


▶ 第4回 「お酒好きの方へ」
~アルコール性脂肪肝と飲酒習慣の見直し~ ←今回

文責:総合内科専門医 内藤 修

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