• 6月 1, 2026

第3回 脂肪肝シリーズ|脂肪肝と筋力低下の意外な関係

― サルコペニア肥満とは? ―

「最近、階段がつらくなった」
「何もないところでつまずく」
「ペットボトルのフタが開けにくい」
「食事中にむせやすい」

そんな変化はありませんか?

年齢のせいと思われがちですが、その背景に筋力や筋肉量の低下が隠れていることがあります。

こうした変化はサルコペニアを疑うきっかけになり、近年では脂肪肝(MASLD)との関連も注目されています。

ただし、つまずきや飲み込みにくさには、神経や関節、嚥下機能の病気など、さまざまな原因があります。

脂肪肝というと、

  • 太っている人
  • お酒を飲む人

の病気というイメージがありますが、実際には、筋肉量や筋力の低下が脂肪肝と関連している場合もあります。

今回は、筋肉量低下と脂肪肝の関係について解説します。

筋肉は“糖の貯蔵庫”です

私たちは食事から糖質(ブドウ糖)を摂取しています。

このブドウ糖は、

  • 血液
  • 筋肉
  • 肝臓

などに取り込まれ、エネルギーとして利用されます。

特に筋肉は、体の中で最も大きな“糖の貯蔵庫”です。

しかし筋肉量が減ると、糖を蓄える場所が少なくなります。

筋肉量が減ると、糖を取り込んで利用する働きが低下し、インスリン抵抗性が強まりやすくなります。

こうした糖代謝の変化は、肝臓への脂肪蓄積にも関係すると考えられています。

筋肉量は加齢や運動不足によって減少します

筋肉量は、加齢とともに少しずつ減少していきます。

特に40代以降では、

  • 運動不足
  • タンパク質不足
  • 睡眠不足
  • ホルモン変化

などが重なることで、筋肉量低下が進みやすくなります。

さらに近年は、

  • デスクワーク中心
  • 車移動中心
  • 階段を使わない生活

など、“筋肉を使わない生活”が増えています。

その結果、

  • 見た目はそれほど太っていない
  • 体重もあまり変わらない

にもかかわらず、

運動不足や加齢などによって筋肉量や筋力が低下し、肥満も重なった状態を「サルコペニア肥満」と呼びます。

体重が大きく変わらなくても、筋肉量が減り、体脂肪が増えている場合があります。

こんな症状はありませんか?

図1. 指輪っかテストで確認する筋肉量低下の目安

両手の親指と人差し指でふくらはぎを囲む指輪っかテスト。囲めない、ちょうど囲める、隙間ができるの3段階で筋肉量低下の可能性を確認する図。
指輪っかテストは、筋肉量低下の可能性に気づくための簡易チェックです。このテストだけでサルコペニアと診断できるわけではありません。

筋肉量低下では、以下のような変化がみられることがあります。

  • 最近つまずきやすい
  • 歩く速度が遅くなった
  • 階段がつらい
  • 疲れやすい
  • 握力が弱くなった
  • 食事中にむせる
  • 長時間歩けない
  • 下半身が細くなった

これらの症状だけでサルコペニアと判断することはできません。特に、むせや飲み込みにくさが続く場合は、嚥下機能の評価が必要です。

こうした変化は、“年齢だから仕方ない”だけではないかもしれません。

筋肉量低下と脂肪肝、さらに糖尿病や動脈硬化が同時に進行していることもあります。

体重だけでは判断できません

図2. サルコペニア肥満とは? 筋肉の衰えと肥満が重なった状態

肥満を示す人物と筋肉量・筋力の低下を示す人物を並べ、両者が重なったサルコペニア肥満を説明する図。
サルコペニア肥満は、筋肉量・筋力などの低下と、体脂肪の過剰な蓄積が重なった状態です。外見だけでは判断できず、筋肉や体組成などの評価が必要です。


健康診断では、体重やBMIを気にする方が多いと思います。

もちろん肥満は脂肪肝の大きなリスクです。

しかし最近では、

  • BMIは正常
  • 見た目は普通

でも、脂肪肝が進行している方が少なくありません。

その背景にあるのが、

  • 内臓脂肪増加
  • 筋肉量低下

です。

つまり、

「体重は変わらない」=「健康」

とは限らないのです。

脂肪肝改善には“筋肉”が重要です

脂肪肝改善というと、

「体重を減らす」

ことだけを意識しがちです。

しかし実際には、“筋肉を維持すること”が非常に重要です。

筋肉は、

  • 糖を消費する
  • 基礎代謝を維持する
  • 血糖上昇を抑える

など、全身の代謝に大きく関わっています。

筋肉を維持・強化する運動は、糖代謝の改善やインスリン抵抗性の軽減につながり、脂肪肝の改善にも役立つと考えられています。

タンパク質をしっかり摂りましょう

筋肉維持には、タンパク質摂取が重要です。

おすすめは、

魚・卵・納豆・豆腐・肉・ヨーグルト

などを毎食バランスよく摂ることです。

特に朝食は大切です。

筋肉を維持するためには、タンパク質を1日を通して適切に摂ることが大切です。

朝食でも卵、納豆、ヨーグルトなどのタンパク質を含む食品を取り入れ、3食の栄養バランスを意識しましょう。

なお、腎臓病などでタンパク質の摂取量に制限がある方は、主治医の指示に従ってください。

無理のない運動から始めましょう


図3.椅子を支えにしたスクワット

椅子の背もたれを両手で支えながら、浅く腰を落としてスクワットをする女性のイラスト。自宅での安全な運動方法と注意点を説明。
太ももやお尻の筋肉を鍛える運動です。


「運動しなきゃ」と思うと、ハードルが高く感じる方もいます。

しかし脂肪肝改善では、まず“日常生活で少し体を動かす”ことが大切です。

例えば、

  • 食後に速歩き
  • スクワット
  • 階段を使う
  • 立ち上がる回数を増やす

だけでも変わってきます。

特におすすめなのが、“食後のゆるスクワット”です。

例えば、椅子に手を添えながら、ゆっくり立つ・座る動作を10回程度行うことから始めてみましょう。

下半身の筋肉を使う運動になり、筋力の維持に役立ちます。

膝や腰に痛みがある方、転倒の危険がある方は無理をせず、体調に合わせて行ってください。

大切なのは、無理なく継続することです。

▶ 第1回 「健康診断でALTが高い方へ」
~脂肪肝(MASLD)は放置してはいけません~

▶ 第2回 「脂肪肝を改善したい方へ」
~まず「甘い飲み物」を見直しましょう~

▶ 第3回 「最近つまずく方へ」
~筋力低下(サルコペニア)と脂肪肝の関係~ ←今回

▶ 第4回 「お酒好きの方へ」
~アルコール性脂肪肝と飲酒習慣の見直し~

文責:総合内科専門医 内藤 修

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