• 9月 10, 2026

🌿 第3回 漢方シリーズ

「気・血・水」とは?

~漢方医学の基本をやさしく解説~

「最近、なんとなく疲れやすい」

「手足が冷える」

「夕方になると足がむくむ」

外来では、このような症状を訴える患者さんは少なくありません。

もちろん、疲れやむくみなどの症状には、貧血や甲状腺疾患、心臓・腎臓の病気などが隠れていることがあります。そのため、まず西洋医学に基づいて必要な診察や検査を行うことが大切です。

そのうえで漢方医学では、患者さんの体全体の状態を考えるときに、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という考え方を用います。

前回ご紹介した、その人の体質や現在の状態を表す「証(しょう)」を考えるうえでも、「気・血・水」は大切な手がかりになります。

今回は、漢方医学の基本となる「気・血・水」について、やさしく解説します。

「気・血・水」は体を支える3つの要素

漢方医学では、私たちの体を大きく

「気」「血」「水」

という3つの要素から捉えます。

「気」は、体を動かすエネルギーや働き。

「血」は、体に栄養とうるおいを与え、心身を支えるもの。

「水」は、体を潤し、水分バランスを保つもの。

そして、この3つは別々に働いているのではなく、互いに影響し合いながらバランスを保っていると考えます。

ただし、ここで大切な注意点があります。

漢方医学でいう「血」や「水」は、西洋医学でいう血液や体液と全く同じ意味ではありません。

「気・血・水」は、患者さんの体全体の状態を捉えるための漢方医学独自の考え方です。

図1.「気・血・水」の全体像

漢方医学では、体の状態を「気・血・水」という3つの要素から捉えます。それぞれは互いに影響し合い、バランスを保っていると考えます。

「気・血・水」のバランスが乱れると?

「気・血・水」は、量が不足したり、巡りが悪くなったりすることで、さまざまな不調につながると考えます。

例えば「気」では、不足した状態を気虚(ききょ)、巡りが悪い状態を気滞(きたい)と呼びます。

「血」では、不足した状態を血虚(けっきょ)、巡りが悪い状態を瘀血(おけつ)と呼びます。

そして「水」の巡りが悪く偏った状態を、水滞(すいたい)と呼びます。「水毒(すいどく)」という言葉が使われることもあります。

どのような症状が現れるのかは、図2にまとめました。

図2.「気・血・水」が乱れると、どんな症状が現れる?

「気・血・水」の不足や巡りの悪さによって、疲れ、冷え、むくみなど、さまざまな症状が現れると考えます。これらの状態は重なってみられることもあります。

大切なのは、

「私は気のタイプ」「私は水のタイプ」

というように、必ず一つだけに分類されるわけではないことです。

例えば、疲れや食欲低下とともに、冷えやむくみがみられることもあります。

一人の患者さんに、複数の「気・血・水」の乱れが重なっていることもあるのです。

同じ症状でも「気・血・水」の状態は違います

ここで、第2回でご紹介した「証」とつながります。

例えば、同じ「めまい」でも、

ある方では、疲れやすさや顔色の悪さが目立つかもしれません。

別の方では、むくみや頭重感を伴っているかもしれません。

「めまい」という症状だけを見ると同じでも、患者さん全体をみると状態は違います。

そのため漢方では、症状だけで薬を決めるのではなく、四診などを通してその人の「証」を考え、漢方薬を選びます。

つまり、

「気・血・水」は、その人に合った漢方薬を考えるための大切な手がかりの一つ

なのです。

「気・血・水」は検査値ではありません

ここは、ぜひ覚えておいていただきたいところです。

「気・血・水」は、血液検査などで数値として測定するものではありません。

また、

「疲れているから気虚」

「むくんでいるから水滞」

と、一つの症状だけで単純に決めるものでもありません。

例えば「疲れやすい」という症状には、貧血、甲状腺疾患、感染症、睡眠障害など、さまざまな原因があります。

むくみには、心臓、腎臓、肝臓などの病気が隠れていることもあります。

そのため、まず必要な病気を見逃さないことが大切です。

西洋医学による診断を行ったうえで、患者さん全体をみる視点の一つとして漢方医学の考え方を取り入れます。

🌿 院長からのワンポイント

「気・血・水」という言葉だけを見ると、難しい漢方理論のように感じるかもしれません。

しかし実際の診療では、

「以前より疲れやすくなった」

「手足が冷える」

「夕方になると足がむくむ」

といった、患者さんが普段感じている症状が大切な手がかりになります。

総合内科医として、まず西洋医学に基づいて診断し、必要な検査や治療を行います。

そのうえで、患者さん一人ひとりの症状や体質を総合的にみながら、必要に応じて漢方薬を治療の選択肢として取り入れています。

西洋医学か、漢方医学か。

二者択一ではありません。

患者さんにとって必要な考え方を上手に組み合わせ、より良い治療につなげることが大切だと考えています。

まとめ

  • 「気・血・水」は、漢方医学で体全体の状態を捉えるための基本的な考え方です。
  • 「気」は体を動かすエネルギーや働き、「血」は栄養とうるおい、「水」は体を潤し水分バランスを保つものとして捉えます。
  • 不足や巡りの悪さによって、気虚・気滞、血虚・瘀血、水滞などの状態が現れると考えます。
  • 「気・血・水」の乱れは、一人の患者さんに複数重なることもあります。
  • 「気・血・水」は西洋医学の検査値そのものではありません。必要な診断を行ったうえで、患者さん全体をみる一つの視点として活用します。


次回予告

🌿 第4回 漢方シリーズ

更年期に使う漢方薬

~同じ更年期でも、選ぶ漢方薬が違う理由~

「急に顔がほてる」

「イライラして眠れない」

「手足が冷えて、むくみも気になる」

更年期の症状は、一人ひとり大きく異なります。

そのため漢方では、単に「更年期だからこの薬」と決めるのではなく、今回ご紹介した「気・血・水」や「証」を手がかりに、その方の症状や体質に合った漢方薬を考えます。

次回は、加味逍遙散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散など、更年期の診療でよく使われる代表的な漢方薬について、それぞれどのような違いがあるのかを分かりやすくご紹介します。

「同じ更年期なのに、なぜ人によって処方が違うの?」

第1~3回で学んだ漢方の基本を、いよいよ実際の診療に当てはめてみましょう。

漢方薬について、このようなお悩みはありませんか?

  • 西洋薬だけでは症状がなかなか改善しない
  • 冷えや便秘、食欲低下などが続いている
  • 更年期症状で困っている
  • 漢方薬が自分に合うのか相談してみたい

漢方薬は、
患者さん一人ひとりの症状や体質に合わせて処方する「医療用医薬品」です。

順聖クリニックでは、西洋医学による診断を基本としながら、必要に応じて漢方薬も組み合わせ、一人ひとりに合った治療をご提案しています。

気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

▶ 問い合わせ、初診のご予約・ご相談はこちら
📞055-251-2121)(WEB予約


漢方薬シリーズを読む

第1回 漢方薬ってどんな薬?
[~西洋医学と組み合わせる、現代の漢方診療~]

第2回 「証(しょう)」って何?
[~同じ病気でも処方が違う理由~]

第3回 「気・血・水」とは?
[~漢方医学の基本をやさしく解説~]

第4回 更年期に使う漢方薬
[~同じ更年期でも、選ぶ漢方薬が違う理由~]

第5回 頭痛・めまいに使う漢方薬
[~同じ頭痛・めまいでも、選ぶ漢方薬が違う?~]

第6回 胃腸の不調に使う漢方薬
[~食欲不振・胃もたれ・お腹の張りを漢方で考える~](公開予定)

第7回 便秘に使う漢方薬
[~便秘のタイプによって選ぶ漢方薬は違う?~](公開予定)

第8回 疲れ・体力低下に使う漢方薬
[~補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯をどう使い分ける?~](公開予定)

第9回 不眠・不安・イライラに使う漢方薬
[~眠れない・不安・イライラを漢方ではどう考える?~](公開予定)

第10回 冷えに使う漢方薬
[~手足の冷え・冷え症にもタイプがある?~」(公開予定)

第11回 むくみに使う漢方薬
[~「水」の乱れから考える漢方薬の使い分け~](公開予定)

第12回 かぜに使う漢方薬
[~葛根湯だけじゃない?症状や時期で選ぶ漢方薬~](公開予定)

第13回 漢方薬の飲み方と副作用
[~「漢方だから安全」とは限らない?知っておきたい注意点~](公開予定)

文責:総合内科専門医 内藤 修

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