• 3月 15, 2026
  • 2月 11, 2026

「骨折してから」では遅い? 骨粗鬆症2025・最新ガイドラインで読み解く【前編】

外来でよく聞くのが、
「骨折して初めて骨粗鬆症だと言われました」という言葉です。
実は骨粗鬆症は、もっと早い段階で気づき、対策できる病気です。
この連載では、2025年に改訂された最新ガイドラインをもとに、
✔ 前編:骨粗鬆症を“早く見つける”ための考え方
✔ 後編:骨折を防ぐための“治療の選び方”
を、院長目線で噛み砕いて解説します。
「転ばぬ先の骨のケア」、ぜひこの機会に一緒に考えてみましょう。

― 結論:骨粗鬆症は「早く気づき、早く測り、減らさない」ことが最大の予防です ―

結論から言うと、骨粗鬆症は「骨折してから気づく病気」では遅く、
50代・60代のうちに骨密度を測定し、生活習慣で“骨を減らさない工夫”を始めることが、
将来の寝たきり予防につながります。

骨粗鬆症は超高齢社会の日本において、今後さらに患者数の増加が予想される疾患です。しかし、進行しても痛みなどの自覚症状がほとんどなく、「気づいたときには骨折していた」というケースが少なくありません。実際、骨粗鬆症検診の受診率は全国平均で約5%程度にとどまり、骨折後でさえ骨粗鬆症の治療が行われていない例も多く見られます。

「もっと早く骨密度を測っていれば…」
これは、骨折後の患者さんからよく聞かれる言葉です。国際骨粗鬆症財団も「最初の骨折を見逃さず、そこで止めよう」と訴えています。最初の骨折をきっかけに骨粗鬆症に気づかず放置すると、反対側の大腿骨を折る“二次骨折”や、同じ部位を再び骨折する“再骨折”につながりやすくなります。こうした骨折の連鎖は、ロコモティブシンドロームやサルコペニアを招き、最終的には寝たきりへとつながる危険性をはらんでいます。

大腿部頚部の骨断面図

骨粗鬆症は骨折してから気づく病気ではありません。
50代・60代で骨密度を測ることが、将来の寝たきりを防ぐ第一歩になります。

骨密度は20~40代がピーク、そこから静かに低下する

骨の量(骨密度)は20~40代でピークを迎え、その後は年齢とともに少しずつ低下していきます。特に女性では閉経後に骨密度の低下が加速します。骨密度の指標として用いられるのがYAM(若年成人平均値)で、20代の平均を100%としたときの割合です。一般に70%未満になると骨粗鬆症と診断されますが、70~80%の段階でも「将来の骨折リスクが高まる注意ゾーン」に入っていると考えられます。

骨粗鬆症は、症状が出にくい“沈黙の病気”です。だからこそ、「症状がないから大丈夫」ではなく、年齢やリスクに応じて能動的に骨密度を測定する姿勢が重要になります。


骨密度検査はいつ受けるべきか?

2025年版のガイドラインでは、

  • 65歳以上の女性
  • 70歳以上の男性
  • 危険因子を有する閉経前後の女性
  • 危険因子を有する50歳以上の男性

について、骨密度測定が有用であると示されています。

実臨床では、女性は50歳前後、男性は60~70歳で一度測定しておくことを勧めたいところです。さらに、両親や祖父母に大腿骨近位部骨折の既往がある方、糖尿病・慢性腎臓病・COPDなどの基礎疾患がある方、乳がんや前立腺がんのホルモン療法を受けている方では、より早期からの骨密度評価が望まれます。

DXA法とQUS法、MD法――検査方法の違いを知っておく

骨密度測定の標準法はDXA(デキサ)法で、腰椎や大腿骨近位部を測定します。比較的規模の大きな医療機関に設置されていることが多く、診断の信頼性が高いのが特徴です。一方、クリニックや自治体検診では、踵(かかと)などを超音波で測るQUS法や第2中手骨をX線写真上でアルミニウム板の濃淡を比較し骨密度を測るMD法が用いられることもあります。

まずは身近な検診(QUS)でチェックし、低下傾向があればDXAで詳しく評価する、という流れでも十分意味があります。大切なのは、「一度も測ったことがない」状態を放置しないことです。


骨を“増やす”より、まずは“減らさない”生活を

骨量を増やせるのは成長期が終わる20歳頃までで、それ以降は基本的に「減らさない工夫」が中心になります。ガイドラインでも、中高年期における予防として、栄養管理や運動の重要性が強調されています。

● 食事のポイント

骨の健康には、カルシウム、たんぱく質、ビタミンD・Kなどが重要です。日本人はカルシウム摂取量が不足しがちで、意識的な摂取が必要です。ビタミンDは食事だけで不足しやすく、日光曝露や必要に応じたサプリメントの活用も選択肢となります。

● 運動のポイント

骨は「負荷」がかかることで保たれます。若くて元気な方であれば、ウォーキングや軽いジョギングなどの荷重運動が有効です。足腰が弱ってきた方には、片脚立ちやゆるスクワットなど、家庭で無理なくできる運動でも十分意味があります。転倒予防の観点から、バランス訓練も重要です。

片脚立ち運動

ゆるスクワット運動


前編のまとめ

骨粗鬆症は、進行してから治す病気ではなく、早く気づき、早く測り、減らさない工夫を続ける病気です。
50代・60代のうちに一度骨密度を測り、自分の骨の状態を知ること。
そして、食事・運動・生活習慣を整えること。
この小さな一歩が、将来の骨折や寝たきりを防ぐ大きな一歩になります。

次回【後編】では、骨密度を実際に回復させる最新の治療戦略や、新しいガイドラインが示した治療の考え方について解説します。

文責:総合内科専門医 内藤 修

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