- 4月 4, 2026
がんは予防できる時代です|医師が教える「5つの習慣+1」【第2回】
がん予防の基本|生活習慣でリスクを減らす「5つの習慣+1」
がんは「生活習慣」である程度予防できる病気です。
第2回 糖尿病、歯周病などの改善も重要
【 今回取り上げる「がんの予防」に関する Q 】
- Q 禁煙、節酒のほかに、がんのリスクを減らせる方法はある?
- Q 食事で具体的に心がけるといいことは?
- Q がんの原因となる感染症の有無を調べるには?
- Q 太りすぎもダメだが、やせすぎもダメって本当?
- Q どんな基礎疾患があるとがんになりやすい?
男性のがんの43%、女性のがんの25%は「予防が可能」
Q 禁煙、節酒のほかに、がんのリスクを減らせる方法はある?
健康への関心が高い方なら「喫煙」や「飲酒」ががんの発症に関わることはすでに把握済みでしょう。「この2つに注意すれば、遺伝性以外の多くのがんは予防できる」と思っている人も多いかもしれません。
確かに、タバコとお酒を避けることはとても重要です。
日本人の発がんの原因のトップはタバコです。タバコに含まれる発がん物質は70種類ほどあり、体内で細胞内の遺伝子に結合し、細胞のがん化を引き起こします。飲酒も同様で、体内に取り込まれたエタノールは肝臓で分解されてアセトアルデヒドという発がん物質に変わります。1日1合以下のお酒でもがんが増えることが報告されたこともあり、“酒は百薬の長”という言葉は死語になるかもしれません。特にお酒を飲むと顔が赤くなる人はアセトアルデヒドを分解する能力が低く、がんのリスクが上昇しやすいので、深酒をするのは非常に危険です。
このように、タバコと酒のがんへの影響は大きいですが、この2つを避けるだけでは不十分です。科学的根拠を基にした「確実に効果が期待できる対策」はほかにもあります。
それを示しているのが、国立がん研究センターがまとめた「日本人のためのがん予防法(5+1)」です(図1)。
5+1とは、「禁煙」「節酒」「食生活の見直し」「体を動かす」「適正体重を維持する」という5つの生活習慣の改善と、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)や肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)など、がんの原因となる「感染症の検査を受ける」行動のことです(図1)。
👉 まずは「1つだけ」取り組んでみましょう。
すべてを一度に変える必要はありません。
図1

国立がん研究センターが長年行ってきたJPHC Studyから、確実に効果が期待できる6つのがん予防法を示しています。
同センターは、これら5つの生活習慣を見直し、感染リスクを避けることで、男性のがんの43.4%、女性のがんの25.3%は予防できるとしています。上に挙げた5+1の中で、あなたが十分にやれていないのは何でしょうか。それこそが予防のためにまずあなたがやるべきことと言えるでしょう。
塩分は控えめに、多種多様な食品をバランスよくとる
Q 食事で具体的に心がけるといいことは?
がんの発症リスクを下げるにはどんな食べ方をすればいいのでしょう。
上に挙げた5つの生活習慣のうち、多くの人が気になるのは、毎日の食事における注意点かもしれません。「食生活の見直し」において推奨されているのは、「減塩する」「野菜と果物をとる」「熱い飲み物や食べ物は冷ましてから」の3つです。それぞれについて具体的に確認しましょう。
減塩する
「塩分のとりすぎは高血圧や脳卒中、心筋梗塞などの血管の病気だけでなく、胃がんのリスクも高めます。
塩分を多く含む食品が胃に入ると、胃粘膜の防御力が低下し、炎症を起こしたり、胃がんの原因となるピロリ菌の持続感染をもたらし、胃がんのリスクを高めると考えられています。かつて一般家庭に冷蔵庫がなかった時代は、食材を塩漬け保存する必要があり、塩分摂取量の多さが胃がんリスクを高めていました。冷蔵庫が普及した現代であれば、塩蔵食品(高塩分の食品)に頼る必要はありません。減塩を意識し、いくらや塩辛、たらこなどの塩蔵食品のとりすぎには注意しましょう。
野菜と果物をとる
野菜と果物を積極的にとることで食道がんのリスクが下がり、摂取量の多い人の食道がんのリスクは約半分になります。また、胃がん、肺がんリスクも低くなる。厚生労働省の「健康日本21(第三次)」では野菜の1日の摂取目標量を350g以上としており、野菜を小鉢で5皿分、それに加えて果物1皿分を目安に摂りたいところです。
熱い飲み物や食べ物は冷ましてから
飲み物や食べ物を熱いままとると、食道がんリスクを上げるという報告が複数あります。熱いまま口に入れた食べ物や飲み物が食道を通る際に、粘膜を傷つけ、傷ついた粘膜細胞が発がん物質の影響を受けやすくなると考えられています。まず熱さを確認し、少し冷ましてからゆっくり口にしましょう。
また、多種多様な食材をとることもがん予防の面では有用です。1975年ごろの日本の食事は大豆製品や魚介類、野菜、海藻、キノコなどいろいろな素材を少しずつ食べていました。このような食べ方を目指すことが大切です。外食でも、単品になりがちな丼ものよりも品数が多い定食を選ぶなど、小さなことから工夫しましょう。
多種多様な食材をとることは、同じ食品ばかり摂ってその食品に含まれる発がん物質などリスクのある成分の蓄積を防ぐことにもつながると言われています。
同じ食品ばかりとると、わずかなリスクが積み重なってそのマイナス面が顕在化し、がん化につながる可能性もあります。そうした意味で、インスタントラーメンのような加工食品を毎日のように食べ続けることはリスクのある行為といえます。一方、食物繊維や発酵食品をとり、腸内細菌のバランスを整えることも重要です。また、コーヒーは肝臓がんや口腔、咽頭、食道がんの発症リスクを下げる可能性が認められています。
👉 ポイントは「偏らないこと」です。
日本人の発がん原因の上位を占めるのが「感染」によるがん
Q がんの原因となる感染症の有無を調べるには?
ウイルスや細菌の「感染」によるがんは、日本人のがんの要因のうち、男性のがんの18.1%、女性のがんの14.7%を占めており、発がんリスクのトップレベルに位置します。がん予防のために決して無視できない要素です。
がん関連の感染症としては、胃がんの原因のピロリ菌、肝臓がんの原因の肝炎ウイルス、子宮頸がんや中咽頭がん(扁桃腺などにできるがん)の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)が重要です。
胃がんの要因の約9割を占めるピロリ菌は、不衛生な水の中に存在し、幼児期に飲んだ井戸水などから感染すると考えられています。現在80歳以上の人では約8割が感染していますが、上下水道が完備された時代に育った若い世代では、感染率は激減しています。ピロリ菌の除菌治療も進んだことによって胃がんの罹患率は減り、かつて1位だった胃がんは最新の調査では男性では4位、女性では5位になっています。しかし、ピロリ菌感染の有無を調べたことがない人で、30歳以上の人は、一度は検査を受けて、陽性の場合は除菌治療を速やかに受けることをお勧めします。
検査方法には大きく「医療機関で調べる方法」「自治体や企業のABC検診」「検査キットを使う」の3つの方法があります。確実に検査・除菌するには、医療機関(消化器内科)を訪れるのが一番ですが、最近では、人間ドックや自治体や企業によって「胃がんリスク検診」いわゆる「ABC検診」を実施するところもあります。また、忙しくて検査に行く時間がない人は各社から出されている検査キットを通販で入手して使う手もあります。
肝臓がんの要因の6割程度を占める肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス/C型肝炎ウイルス)も、未検査の人は地域の保健所や医療機関(内科または消化器内科)で検査を受けましょう。市区町村が行う検査であれば無料で受けられるところが多いです。現在は、肝炎に対する効果的な治療方法も確立しています。
子宮頸がんはほぼ100%が、中咽頭がんは5割弱が、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって起こります。原因となるHPV感染の有無を検査することは可能ですが、偽陽性(感染していないのに陽性になる)と出る場合もあります。予防のためには、HPVワクチンの接種(小学6年から高校1年相当の女性を対象に定期接種を実施)の効果のほうがはるかに高いです。ワクチン接種、そして子宮頸がんについては定期的ながん検診の二段構えが重要です。
HPVワクチンは婦人科・産婦人科・小児科・内科などで接種できます。
👉 感染は“防げるがん”です。
太りすぎも、やせすぎもダメ 糖尿病はがんリスクを高める
Q 太りすぎもダメだが、やせすぎもダメって本当?
「適正体重を守る」こともがん予防になります。男女とも、がんを含むすべての原因による死亡リスクは、太りすぎでもやせすぎでも高くなることが、中高年の日本人を対象にした研究で明らかになっています(図2)。
図2

日本人の40歳以上の男性16万人、女性19万人のデータを平均12.5年追跡し、BMI値(体格指数)が総死亡リスク、がん死亡リスクに与える影響を推定されています。がんによる死亡リスクは太りすぎでもやせすぎでも高くなっています。
がんの死亡リスクは、男性では肥満よりもやせている人のほうが高くなります。反対に、女性ではやせすぎよりも肥満のほうがリスクが高くなります。
肥満は食道・膵臓・肝臓・大腸・乳がんなどのリスクを高めます。一方、やせすぎでがんのリスクが高まるのは、低栄養状態になると、がん細胞に対する免疫機能が弱ってしまうためと考えられています。
「日本人のためのがん予防法」では、「男性はBMI値21~27、女性は21~25の範囲になるように体重を管理」することを推奨しています。
それに加えて、「日本人のためのがん予防法」では「体を動かす」ことも推奨しています。肥満予防のためにも、やせすぎによる体力低下を防ぐためにも運動は重要です。日本人はもっと運動をすべきと言われています。運動は多くのがんを予防し、とりわけ大腸がんや乳がんなどに顕著な予防効果をもたらすとされています。
運動は週1回より3回、3回より5回と、多くやるほど効果的ですが、毎日15分程度でも動かないよりは動いたほうがいいです。最近は短時間から利用できる安価なジムもあるので、そうしたものも気軽に利用するのもいいです。
運動にあたっては、厚生労働省が推奨している身体活動量の指針も目安となります。
「太りすぎ」も「やせすぎ」もリスクです。
図3

Q どんな基礎疾患があるとがんになりやすい?
がん予防のためには、がんリスクを高める「持病」についても注意しましょう。がんを注意すべき基礎疾患として重要なのが糖尿病です。2型糖尿病では、膵臓がん、肝臓がんによる死亡率が約2倍上昇します。
英国で2型糖尿病と診断された35歳以上の成人13万人以上を対象にした調査では、2型糖尿病の人では、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、子宮内膜がんによる死亡リスクが1.5倍以上高いと報告されています。
糖尿病では、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすいですが、血糖値を下げようとして過剰にインスリンが分泌されると、発がんに関与する可能性があると考えられています。
「歯周病」にも注意が必要です。歯周病菌が膵臓がん患者の唾液中に多く存在していることや、歯周病に罹患すると食道がんリスクが高まることや、歯周病の原因になる細菌と同じ菌株が大腸がん組織に発見されたことなどが明らかになっています。
今回は、がん予防のための5つの健康習慣と感染予防についてお伝えしましたが、禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の維持の5つは、「実践する健康習慣の数が多いほど効果が高くなる」というエビデンスも出ています(図4)。ぜひ、今日から1つでも多く実践しましょう。
図4

40歳から69歳の男女約14万人を対象に、生活習慣とがんや他の病期の罹患について追跡調査が実施されています。その結果、5つの健康習慣を実践する人は、0または1つのみ実践する人と比較して、男性で43%、女性で37%、がんになるリスクが低下しています。
とはいえ、完璧な生活習慣を実践してもがんリスクは半分程度しか下げられません。だからこそ、事故予防のための安全運転に加えて命を守るシートベルトをするように、がん予防のための健康習慣や感染症対策に加えて、早期発見のためのがん検診をセットで行うことも忘れないでください。
がん予防は、特別なことではありません。
禁煙、節酒、食事、運動――
どれも「今日から始められること」です。「自分は何から始めればいいか分からない」
そんな方は、一度ご相談ください。生活習慣や体の状態に合わせて、無理のない対策をご提案します。
─────────────────がん予防は、特別なことではありません。
日々の生活の積み重ねです。すべてを完璧にやる必要はありません。
まずは一つでいい。👉 「できることを1つ始める」
それが、将来の大きな差になります
👉 生活習慣を整えても、がんを完全に防ぐことはできません。
だからこそ「検診」が重要になります。
次回は、第3回 がんは無症状のうちに迎え撃つ!受けるべき5つの検診をレビューします。
文責:総合内科専門医 内藤 修
