睡眠時無呼吸症候群

SAS診療の流れ
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS=サスと呼ぶ)とは、睡眠中に10秒以上の無呼吸と低呼吸が1時間あたり5回以上繰り返される病気です。 放置しておくと急性心筋梗塞や脳卒中など多彩で危険な合併症をきたしやすく、重症SASでは8年後の死亡率が40%と報告されています。 当院では、2007年に「睡眠呼吸センター」を開設しました。2025年5月までに700件以上の一泊二日入院PSG精密検査の実績と豊富な治療経験を有しております。 下記の「SASの症状」「SASの合併症」「SASの疫学」「SASと睡眠障害の脳波解析」「当院でのSAS専門外来」をぜひお読みになり、関心を持っていただければ幸いです。 ご自身やご家族がSASの心配をされている方は、まず電話にてSAS外来の予約をしてください。 ご本人への診察や説明後に、終夜パルスオキシメーターや簡易PSG検査、PSG精密検査(正確な重症度判定や脳波検査による睡眠の質の測定)の検査日を順次調整していきます。 SASが判明した場合は、PSG精密検査の結果を受けて治療方針等を説明させていただきます。 (ちなみにSASでなくても、睡眠不足や早食いの方は高血糖スパイクを起こし日中眠くなります。また、睡眠不足の方は肥満になります)
SASの症状
日中の眠気、朝の頭痛や疲れ、夜間頻尿、家族などに指摘されるいびきや呼吸停止、生活習慣病があり日中に倦怠感が強い方、肥満症、首が太く短い方、東洋人に多い顎が小さい方、舌根部が大きい方、口蓋垂が狭い方、扁桃腺が大きい方などは、SASの可能性が高いです。 また、集中力や注意力の低下、抑うつ状態など精神状態の悪化、イライラしやすい、性格が悪くなる、感情の起伏が大きくなるなどの性格的な変化も明らかにされています。 これらの症状は、PSG精密検査での脳波によるレム睡眠不足・深いノンレム睡眠不足などを解析すれば、原因がほとんど判明します。 適切な治療を設定するために、簡易PSG検査結果のみで治療方針を決めることはまれです。
SASの合併症
合併症はとても多彩で、高血圧症、糖尿病、高血糖スパイク、狭心症、急性心筋梗塞、大動脈解離、脳梗塞、動脈硬化症、慢性腎臓病、慢性心不全、心房細動などの不整脈、突然死、逆流性食道炎、ED、うつ病、認知症、その他にも様々な合併症の危険性が高いと判明しています。
SASの疫学
日本睡眠学会では、日本人でSASに罹患している軽症を含めた方は約2,200万人おり、約940万人にCPAP治療が必要と報告しています。また、男女30歳〜60歳の7人に1人はSASの治療が直ぐに必要と指摘されています。 SASは、肥満が原因ではない方が約40%と報告されています。痩せている人も骨格の問題が関与するため、SASの症状がある場合は決して安心できません。 寝ている間のことで自覚があまりない方、検査や治療が面倒な方、自分はまだ大丈夫だろうと甘く考える方、CPAP治療費を払いたくない方などが多く、実際に治療を受けている方は未だ70万人未満にすぎないと警鐘を鳴らしています。 医療費や通院のわずらわしさも気になりますが、ご自身の命が最も大切です。 また、せっかくのCPAP治療導入後にCPAPを目標時間・目標割合まで使用しないことで、合併症のために莫大な医療費がかかったり、脳梗塞などで寝たきりになるなど、元も子もありません。CPAP使用指導が必要なので、通院は大切です。
SASの生存率
厚生労働省研究班の調査では、睡眠1時間あたりの無呼吸数と低呼吸数が20回以上ある場合は8年生存率が63%、同じく30回以上の重症の場合は8年生存率が60%と報告されています。SAS治療中の方が生命保険に加入できないことが多い実情は、早期の死亡率がとても高いためです。 しかし、CPAPを目標時間・目標割合どおり使用できていれば、健康寿命は健常者と変わらないことも明らかにされています。ひどいイビキも無呼吸もCPAPでバッチリ取れて、翌朝はスッキリします。
SASと睡眠障害の脳波解析
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があり、いずれも重要な役割を果たしています。 レム睡眠(主に夢を見ている)は、脳の海馬で記憶の整理と定着を行い、ストレスを軽減するなど精神的な安定が得られ、心のバランスを取るために重要です。 深いノンレム睡眠(深睡眠)は、就眠直後にまず現れ、成長ホルモンが分泌されます。その他、深睡眠は脳や体の疲労回復、身体の修復、免疫機能の向上などに重要です。さらに、脳の老廃物(アミロイドβなどの代謝老廃物)を効率的に除去します。すなわち、深睡眠が少ないとアルツハイマー型認知症になりやすくなります。また、深睡眠は不要な記憶を消去したり、短期記憶の定着を行います。 これらは脳波でどこに問題があるかを調べることで判明します。SASの他にも睡眠障害が見つかることがあります。 レム睡眠行動障害や入眠時ミオクローヌス、むずむず脚症候群には治療薬の処方を行っています。特発性過眠症やナルコレプシーの場合には、山梨県内の医療機関ではモディオダールの処方ができないため、都内の専門病院へ紹介させていただくことがあります。
当院でのSAS専門外来
日本睡眠学会や日本呼吸器学会などの情報や豊富な経験を生かし、治療方法のアドバイスを行っています。 例えば、良い枕の選び方、飲酒や喫煙、スマホ検索や入浴などは睡眠何時間前から避けるべきか、減量の意義、治療せずに寝落ちを防ぐ方法、理想的な睡眠時間と「睡眠12箇条」、4時間以下の睡眠時間の危険性、CPAP不具合の解決策、CPAPを目標何時間以上・目標何%以上使用すると合併症を防げるのか、CPAP治療を終了する際の目安と検査について、CPAP治療中の呑気症・腹部膨満感への対応、及びCPAP以外の治療法についても説明しております。 軽症例では、約3年間劣化しないといわれるマウスピース作成を口腔外科に依頼するほか、口蓋垂が狭い方へは有効率約60%といわれる耳鼻咽喉科での口蓋垂軟口蓋咽頭形成術の依頼を検討します。さらに、舌下神経電気刺激療法とは何かについての説明など、具体的な治療提案や不安の相談に応じております。 ぜひ、脳波チェックができる「PSG精密検査」を行っている専門医療機関へ、突然合併症が出る前に、なるべく早期に受診しましょう。
※睡眠時無呼吸症候群に関しては、インターネットの予約ではなく、電話または診察時に予約・お問い合わせください。