• 2月 14, 2026
  • 2月 12, 2026

新世代の睡眠薬・不眠症治療の問題点(後編)

睡眠薬の安全な見直しと、眠りの質を高める生活習慣

  • 新世代の睡眠薬は「魔法の薬」ではありません。
  • 本当に大切なのは、薬を使いながら“薬に頼りすぎない睡眠”を取り戻していくことです。


睡眠薬の効き方の違いを比べてみよう

脳の働きを抑制する薬はリスクあり


効き目が強い睡眠薬ほど副作用も出やすい


各々睡眠薬の作用イメージ


「睡眠薬を安全に切り替えるコツ」

①いきなりやめない(減薬はゆっくり)

  • 長期服用中のBZ系・非BZ系は自己判断で急に中止しない
  • 医師と相談しながら数週間~数か月かけて減量
  • 減量のペースは、0.25~0.5錠ずつ、2~4週ごとに調整 (※実際の減量幅は薬剤の種類・用量・年齢・体調により異なる)
  • 多少眠れなくても慌てて戻さない
  • つらければ無理せず、一段階戻してOK
  • 減薬に“正解のスピード”はありません


各段階:2~4週が目安(個人差あり)


②新しい睡眠薬に「置き換えながら」切り替える

  • メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬を併用
  • 眠りを保ちながら徐々に切り替える
  • 漢方薬の併用も選択肢
  • 行ったり来たりしながら進むのが普通
  • 切り替えは簡単ではない=焦らないことが成功のコツ


慌てずにゆっくり漸減していくこと


③不安や緊張が強い場合は“土台づくり”が大切

※うつ状態が背景にある場合は、睡眠薬ではなく抗うつ薬による治療が必要になることがあります。※以下はあくまで代表例です。

  • 依存性の少ない抗不安薬の併用の検討(セディールなど)
  • うつ・不安を伴う場合は抗うつ薬の検討(デジレル、リフレックス、テトラミド、三環系抗うつ薬、SSRI、SNRIなど)
  • 漢方薬の併用も考慮


④不眠症に効く漢方薬は“じわじわ効く”睡眠のサポーター

※漢方薬は即効性が少ないため、2~4週間継続してから効果を判定します。

※漢方薬の選択は体質(虚実)や併存症により大きく異なります。※以下はあくまで代表例です。

  • 不眠、ストレス、イライラ:抑肝散(よくかんさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
  • 不眠、心身の疲れ、貧血気味:加味帰脾湯(かみきひとう)
  • 不眠、動悸、精神不安:柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
  • 不眠、疲れや心身の消耗:酸棗仁湯(さんそうにんとう)
  • 不眠、神経質、疲れやすい:桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) 
  • 不眠、喉の異物感、精神不安、うつ状態、ストレス、神経性胃炎、咳、しわがれ声など:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)


⑤精神症状を伴う不眠は専門医のサポートが大切

  • ない・軽度→一般内科で対応可能
  • 強い不安・抑うつ・双極性障害(躁うつ病)など→心療内科・精神科へ


⑥もうBZ系・非BZ系から移行を検討する時代

“どのタイプの不眠か?”で新世代の睡眠薬の選び方は変わります。※以下はあくまで代表例です。実際は外来診で相談して決めていきます。

  • 寝つきだけが悪い→ボルズィ
  • 寝つきが悪い+途中で目が覚める→デエビゴ、クービビック
  • 翌朝の眠気はできるだけ避けたい→クービビック、ボルズィ
  • 途中で目が覚める+朝早く目が覚める→ベルソムラ、デエビゴ
  • なるべく朝までしっかり寝たい→デエビゴ



デエビゴは持ち越し作用に注意


主な睡眠薬と作用時間


不眠症治療で大切なポイント

①薬だけに頼らない工夫も大切

生活習慣改善や睡眠リズム改善が“快眠の近道”です。

  • 就寝・起床時刻をなるべく一定にする
  • 就寝前のスマホ・カフェインを控える
  • 寝酒を控える
  • 1日3食を同じ時間に摂取し体内時計を整える
  • 寝床で長時間起きていない
  • 寝室の明るさ・音・温度を整えるなど…


体内時計を整える夕食の時間


寝酒による睡眠は質も量も悪い


②睡眠時間の目安(成人・高齢者)

  • 睡眠は「時間」と「質」の両方が大切
  • 厚生労働省「健康づくりのためのガイドライン2023」では、短すぎる睡眠・長すぎる睡眠はいずれも健康リスクとの関連が指摘されている
  • 成人の目安:6~8時間
  • 80歳以上の目安:6時間前後


③昼寝の適切な長さは?

  • ブリガム・アンド・ウィメンズ病院などの研究によると、1日1時間以上の長い昼寝では、1時間未満の人と比較してアルツハイマー型認知症の発症リスクが1.4倍に増加すると報告している
  • 「理想的な昼寝は15分~30分」
  • 午後1〜3時の時間帯に短時間だけ昼寝するのが効果的


④「寝だめ」は効果が薄い?

  • 平日に睡眠不足で、休日に「寝だめ」しても健康への悪影響は解消されず、「睡眠負債」は残る
  • 日頃からの睡眠リズムが大切


⑤睡眠時無呼吸症候群(SAS)はないか?

  • 自覚的な睡眠の質や時間は、あまり当てにならない
  • 睡眠学者の柳沢正史教授によれば、「眠れている」と感じている人の約40%に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が見つかっている
  • 成人の約7%が治療対象となるSASを有するとされ、さらに30〜69歳の約3割が“潜在的リスク層”と推定されている
  • 脳内の老廃物であるアミロイドβは、主に深いノンレム睡眠(深睡眠)中に分解・排出される
  • SASにより深睡眠が不足するとアミロイドβが脳にたまり、アルツハイマー型認知症リスクが上昇する


オレキシンを発見した柳沢正史教授の解説動画も参考になります


「不眠症」以外の睡眠障害とは?

睡眠障害は「眠れない」不眠症だけでなく、日中の強い眠気や、睡眠中に呼吸が止まるものなど多岐にわたります。代表的なものは以下のとおりです。

  • レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
  • 周期性四肢運動障害
  • 特発性過眠症
  • ナルコレプシー
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
  • 概日リズム睡眠・覚醒障害 (体内時計のズレ)
  • レム睡眠行動障害など…


不眠症以外の睡眠障害


※睡眠薬の変更・中止・併用は、必ず主治医と相談の上で行ってください。

※特に気になっている具体的な症状(いびきがひどい、昼間どうしても寝てしまうなど)はありますか?心配な方は電話で予約の上、お越しください。


次回は、「内科専門医が解説:科学的ダイエット完全ガイド(改訂版シリーズ)」をレビューします。

“第1回グレリンとレプチンおよびGLP-1は食欲を調整するホルモン~第5回ダイエット・栄養素・サプリメントpart4”までの要点を整理した改訂版です。

文責:総合内科専門医 内藤 修

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